表1 保毒虫率の推移(現地ほ場)




                   
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兵庫県立農林水産技術総合センター
お知らせ -記者発表-

「イネ縞葉枯病しまはがれびょう」の被害拡大抑制に取り組んでいます


月/日
(曜日)
事務所等名 電 話 発表者(担当者) 配布先
5月28日
(火)
県立農林水産技術総合センター

@0790-
47-1222

所長 渡邊 大直
@研究主幹(防除指導担当)前川 和正

中・西・北播磨県民局記者クラブ
県庁記者クラブ


「イネ縞葉枯病」は1980年代に県内で流行し、減収率が20%を超えるなど大きな問題となった病害で、近年、再流行の兆しがみられています。昨年度は保毒虫率が平均6%であった西播磨地域を中心に発生面積が3,400haに達しました。水稲の作付けシーズンを迎え、関係機関と連携し、被害抑制対策に取り組んでいます。

1.イネ縞葉枯病とは
・水稲に発生するウイルス性の病害で、生育初期の発病では葉が細く巻き垂れ下がった状態で枯れ(ゆうれい症状)、生育後期の発病では正常に穂が出なくなり、収量減となります。

・「ヒメトビウンカ(以下、ウンカ)」という体長3〜4mmの小さな虫によって株から株へと伝染され、発病すると薬剤で治療できません。
2001年以降被害の発生をみなくなっていましたが、近年になり県西部を中心に再び被害が拡大しています。

2.再流行の要因
 水稲の主要害虫が斑点米カメムシへ移ったことでウンカの防除に重点がおかれなくなったこと、麦作の増加が春季のウンカ増殖に好適な生息場所を提供していること、等により、ウンカ虫数が増加したことが再流行の主な要因と考えられます。

3.これまでに明らかになったこと
 昨年度実施したほ場試験では、ウンカの発生に合わせた薬剤防除により7月のウンカ虫数を無防除の6%まで抑えることができ、その後の発病が抑制されました。さらに、5月に6%であったウイルス保毒虫率はこのほ場では9月に1%まで低下しました。適期の防除によりウンカ虫数を減らすことで、翌年に持ち越されるウイルス(保毒虫数)を少なくできました。
 ウイルスの感染機会を少なくすることで、再流行を防ぐことができます(下記4の防除対策参照)。今後は、イネ縞葉枯病及びウンカの発生生態をさらに解明していくとともに、薬剤の使用を最小限に抑えた「環境に配慮した防除対策」の確立に向けた試験研究に取り組みます。

4.防除対策
(1)化学的防除(薬剤防除)・・・@田植え時の箱施用剤処理の徹底(初期感染を防ぐ)、A最高分げつ期(7月中旬)頃の本田防除の実施(後期感染を防ぐ)、によりウンカ虫数を減らします。
(2)耕種的防除・・・@ひこばえ(稲刈後に株元から再び生える茎葉と穂)のすき込み、A畦畔除草の徹底、によりウイルス保毒虫を減らします。

5.取材対応    データ、写真等を提供できます。

(参考)
               イネ縞葉枯病とヒメトビウンカ

 「イネ縞葉枯病」(写真1)は、「ヒメトビウンカ」(写真2)によって株から株へと伝染されるウイルス性病害で、発病すると薬剤で治療できない、やっかいな病害です。@ヒメトビウンカのウイルス保毒虫率(ウイルスを体内に保有しているヒメトビウンカの割合)に増加の兆しがみられること、A水田内のヒメトビウンカ虫数が増加傾向にあること、等から今後も被害が拡大すると予測されます。本病の発生動向に注意し、防除対策を講じることで本病の蔓延を未然に防ぐ必要があります。

1.発生状況の推移

 図1は県内でも被害の多い県西部におけるイネ縞葉枯病発病株率の年次推移を、図2はヒメトビウンカのウイルス保毒虫率の年次推移を示しています。大流行した1980年代の発病株率は10%以上(図1)、ウイルス保毒虫率も10%程度(図2)と高い状態でした。その後、防除対策の徹底により発病株率、保毒虫率とも減少し、2001年以降は本病の発生がみられなくなりました。しかし、2008年から保毒虫率が再び増加傾向を示し、県西部を中心に本病の被害が拡大しつつあります。

 図1は県内でも被害の多い県西部におけるイネ縞葉枯病発病株率の年次推移を、図2はヒメトビウンカのウイルス保毒虫率の年次推移を示しています。大流行した1980年代の発病株率は10%以上(図1)、ウイルス保毒虫率も10%程度(図2)と高い状態でした。その後、防除対策の徹底により発病株率、保毒虫率とも減少し、2001年以降は本病の発生がみられなくなりました。しかし、2008年から保毒虫率が再び増加傾向を示し、県西部を中心に本病の被害が拡大しつつあります。













写真1【イネ縞葉枯病】






発病株率(%)


    


図1 8月下旬のイネ縞葉枯病発病株率の推移(県西部)




                                              

保毒虫立(%)


図2 県内におけるヒメトビウンカ(第1世代)のイネ縞葉枯病ウイルス保毒虫率の推移



2.再流行の要因
 本病が再び増え始めた要因の1つとして、防除の重点が斑点米カメムシへ移行したこと等により水田内でのヒメトビウンカ虫数が増加したことが考えられます。昨年度、県西部において実施したほ場試験の結果を図3、4、表1に示します。田植え時防除と本田薬剤防除を2回実施した慣行防除区では、7月下旬までヒメトビウンカ虫数を無防除の6%まで抑えることができ(図3)、9月上旬の本病被害が低く抑えられました(図4)。9月上旬に発病株率が高いと保毒虫率が高くなる傾向があり(図5)、9月の発病株率が低く抑えられた慣行防除区ではウイルス保毒虫率も1%と低くなりました(表1)。適期防除でヒメトビウンカ虫数を少なくすることで、その後の発病が抑制され、結果、保毒虫が少なくなったと考えられます。防除せずにヒメトビウンカ虫数が多いと(図3:無防除)、発病も多くなり(図4:無防除)、ウイルス保毒虫も高いレベルが維持されました(表1:無防除)


虫数/10回振り(頭)




図3 ヒメトビウンカ虫数の推移(現地ほ場)


発病株率(%)








図4 イネ縞葉枯病累積発病株率の推移(現地ほ場)


保毒虫率(%)





                  発病株率(%)
                  



図5 イネ縞葉枯病発病株率と保毒虫率の関係(県西部:9月上旬)














3.防除対策

1)化学的防除(薬剤防除)
・  本病が発生している地域では、田植え時の薬剤処理の徹底、最高分げつ期(7月中旬)頃の薬剤防除の実施によりヒメトビウンカ虫数を減らすことで、被害軽減に繋げます。
・  ムギ栽培地域においては、ヒメトビウンカがムギで一世代を過ごし増殖するため、ムギ栽培のない地域と比較してヒメトビウンカの数が多い傾向にあります。ムギ畑において適期(5月下旬頃:第1世代幼虫期)に薬剤防除を実施することで、ムギ畑から水田へのヒメトビウンカの飛び込み数を減らし、発生を抑えることができます。

2)耕種的防除
・ ひこばえ(稲刈後に株元から再び生える茎葉と穂)は収穫後のヒメトビウンカの生息場所となり、保毒虫率を高める要因となります。本病の発生を確認した地域では、「ひこばえ」を早めにすき込むことで保毒虫を減少させます。

・  畦畔雑草は、ヒメトビウンカの越冬場所として利用されます。秋〜春にかけて水田周囲の除草を徹底することで、ヒメトビウンカの数を減少させます。

4.今後の方針
今回紹介したほ場試験は、全農兵庫、JA、農薬メーカー、農業改良普及センター及び農林水産技術総合センターが連携し、取り組んだものです。ヒメトビウンカは飛翔して移動するため、個々の農家の取組だけでは、本病の蔓延を食い止めることは困難です。地域が一つになって本病の被害拡大防止に努めていくよう、今後も関係機関と連携し被害防止対策に努めます。


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