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兵庫県立農林水産技術総合センター

センターからひとこと

 (当センターの所長、次長、各技術センター所長等が順に執筆します。)
   今月は「森林林業技術センター所長」が執筆しました。

 森林林業技術センターは、昭和9年に兵庫県林業試験場として都道府県による林業試験場としては全国で2番目に設置され、今年で75年目を迎えています。場所は中国自動車道山崎ICから29号線を北へ5kmほど行った風光明媚な高台にあります。今年の組織改編で普及部が資源部と統合し資源部普及担当となりましたが、業務内容としては昨年までと同じです。木材利用部、緑化センター、所付ともどもセンター一丸となって、森林の持つさまざまな機能、役割が十分果たせるように、森林の機能の維持・増進を図り、資源循環型社会に対応した森林林業技術と木材の利用推進のための技術開発と普及に取り組んでいきます。
  
  さて、現在の森林林業技術センターの研究分野は、大きく次の4つの分野を担当しています。
 1 豊かな森林空間を創出する技術開発
 2 県産木材の利用を進める技術開発
 3 自然災害に強い森づくりのための技術開発
 4 農のゼロエミッションを進める技術開発
  これらの分野のなかで平成21年度は、@豊かな森林空間分野では、里山林管理や菌根性きのこの栽培など主要4課題、A県産木材の利用分野では、県産スギ材の横架材使用や県産無垢内装材の利用技術など主要5課題、B自然災害に強い森づくり分野では、災害に強い森づくりの造成技術など主要2課題、C農のゼロエミッション分野では、樹皮の土木資材等への活用と機能調査の主要1課題を実施するほか、関連事業を9課題実施しています。

 そのうち、今回は2つの課題について紹介します。
 1つ目は、災害に強い森づくりに向けた森林の造成・管理技術です。平成16年の台風23号などの襲来により、手入れ不足のスギ、ヒノキ林のうち比較的高齢(林齢40年生前後)の林が、将棋倒しになったり根こそぎ倒れるという過去に例がないほど大きな森林被害がありました。
 このため、県では県民緑税を活用した緊急防災林整備や里山防災林整備事業などにより、@表層土砂の安定をはかり、A下層植生の早期回復を促すことを目的として、間伐の際に発生する間伐木を利用した簡易な土留工などの設置を行っており、当センターにおいてその実施効果の検証をおこなっているところです。土留工が設置された箇所では、設置されていない箇所と比べて半分程度に土砂の流失が抑えられたことが確かめられました。また、間伐を実施した箇所は実施していない箇所と比べて植生回復の発現効果が大きくなったことが明らかとなりました。

間伐木を利用した土留工と表層土砂の移動量を測るため
に設置した土砂受け箱の状況
緊急防災林整備実施地と土砂受け箱設置状況

 また、針葉樹と広葉樹の混交林に誘導していくことで耐風性の向上や表層浸食防止機能が向上するデータが得られつつあります。今後、森林の立木を引き倒す試験や浸透能の調査なども予定しており、できるだけ数値化し目に見える試験を行っていきたいと考えています。
広葉樹をワイヤロープで引っ張って最大抵抗力を調べて
いる様子
広葉樹引き倒し試験に用いた器具(チルホール)

 2つ目の課題は、広葉樹内でのホンシメジ栽培についてです。
 エネルギー革命以降、薪炭や肥料として使ってきた森林と人とのつきあい方が崩れてきており、そのことが里山荒廃の原因のひとつとなっていますが、近年の動きとして、森林ボランティアの人たちによる森林整備という新しい関係ができつつあります。そのお手伝いとして里山での楽しみや魅力をつくることがこれからの長くつきあえるひとつのアイテムになるのではと、広葉樹内でホンシメジをつくる提案をしたいと考えており、そのための簡易栽培方法の試験をはじめています。また、森林に入る人たちの意向調査も行っていく予定にしています。
 
森林ボランティアによるホンシメジの発生環境整備の状況 ホンシメジの発生(イメージ)

 そのほか、松くい虫やカシノナガキクイムシなどの森林病害虫対策、県産木材の利用を進める技術についての試験研究、さらには、森林・林業・木材に関する調査や技術研修、各種相談を行っています。
また、開かれた試験研究機関をめざして、研究成果発表会をはじめ広く研究成果や施設内容を知っていただくための公開デーや森林林業フォーラムなども開催していくこととしています。


  平成21年7月1日

                                              兵庫県立農林水産技術総合センター
                                                森林林業技術センター所長  松田博文 
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