センター雑感

当センターの各部署が順に担当して、季節の風景や出来事など様々な話題を紹介します。
今月は 淡路農業技術センター 畜産部 課長 生田 健太郎が担当します。

牛舎花壇の2種類のローズ

はじめて、このコラムに寄稿させて頂きます。私の研究対象は牛(動物)ですが、今回は植物の話をさせて頂きます。

突然ですが、人はなぜ花を育てるのでしょうか?私は「季節(特に春)を感じるため」だと思うのです。花卉部門の研究員や普及員さんからは「何、素人が恰好つけてんだ!」と顰蹙を買いそうですが、腹ではなく、心を満たそうと花を買い求める消費者の気持ちがあってこそ、農業としての花卉生産が成り立っているのではないでしょうか。

一方、酪農家さんの中にも牧場イメージアップの一環として、牛舎周辺を花で一杯にしておられる方を見かけます。当所の牛舎の周りにも幅1m弱の花壇が西側以外を取り囲んでいます。牛舎は東西に長く建っているため、南側は一日中日向、北側は一日中日陰といった環境です。そこで、私は休日の診療の合間に南側にはバラを、北側にはクリスマスローズを植えています。

バラには沢山の品種がありますが、殿堂入りの有名品種や強香品種を中心に自宅からあふれた鉢植えや接ぎ木した株などを少しずつ植え付けました。接ぎ木は冬剪定した枝を穂木に野生のノイバラを堀上げてきて切り接ぎしますが、プロなら9割以上と言われる活着率が最近は5割程度で、始めた頃より低下しています(写真1,2)。老眼の進行と共に形成層が見えづらくなっているのが原因でしょうか?それでも懲りずに今年の夏は芽接ぎにチャレンジしようと思い、ノイバラを青枝挿ししてみました。

   
写真 1(左):バラの切り接ぎ(芽が動き出すまでは過湿状態にする)
写真 2(右):接ぎ木(奥は成功、手前は失敗)

バラの管理は病害虫との戦いでもあります。ついつい忙しさのあまり手を抜くとあっという間にやられてしまうことが多々ありました。牛なら病気になっても治療で何とかなりますが、バラの黒星病は手強く毎年感染拡大で葉を失い、防除の重要性を思い知らされます。今年もすでに新葉が展開しました(写真3)。これからが防除の本格シーズンで、今年こそは病気を出すまいと気合いを入れているところです。

バラの花はその艶やかな姿や色に加え、個性豊かな香りも魅力的です。「香りのないバラは微笑まない美女のようだ」とも・・・。美女の皆さん!微笑みましょう。

この原稿が皆様の目にとまる頃、南側花壇のバラが満開を迎えていることでしょう。淡路農業技術センターにお越しの際は牛舎前の駐車場(衛生管理区域外)から眺めてみて下さい。

   
写真 3(左):南側花壇のバラ 写真 4(右):北側花壇のクリスマスローズ

クリスマスローズはローズと言ってもバラではなく、クリスマスの頃にも咲きません。キンポウゲ科Helleborus.(ヘレボラス)属の宿根草で、欧米では原種のH. niger(ニゲル)のみをさす名称ですが、日本では交雑種も含め広くクリスマスローズと呼んでいます。中でも無茎種の交配種は最も多く流通しており、それらは原種のH. orientalis(オリエンタリス)が主要な交配親であったことから、H. Orientalis hybridus(オリエンタリス・ハイブリッド)と呼ばれた時期もありましたが、現在はH.×hybridus(ヒブリダス)が正式名称のようです。園芸品種は交雑を繰り返すため自家受粉の実生では必ずしも親株と同じ花形・花色が咲くとは限らず、逆に時として思いも寄らないきれいな花が得られることもあります。私がこの花を最初に買った頃はシングル(一重咲)のノンスポット(無地)でも開花株なら数千円していましたが、最近はダブル(八重咲)でもかなりお手頃価格で入手できるようになりました。それでも超多花弁のピコティーですとネットオークションで数万円の値がつくこともあるようです。

私は購入した親株を交配し、種からクリスマスローズを育てますが、種はとりまきしてもすぐには発芽しないので、土中で保存し、冬に播種します。花が咲くまでには最低4年かかり、その間、春と秋に植え替えながらポットを大きくしていきます。過湿にすると根腐れを起こすし、水切れするとすぐしな垂れ、灰色カビ病で何株も枯死させたりと失敗も少なくありませんが、昨年の秋、北側の花壇に植え付けた3年生株が3月に入って開花の時期を迎えました(写真4)。開花したとはいえ、未熟な株なので早めに花を切ってやらねばと思いつつ、なかに2株すばらしい花色が出たので、かわいそうですがこの子たちには種を作ってもらいます(写真5,6)。さて次はどんな花に出会えるか、この春、発芽した子たちも本葉が出始め、今年もそろそろポット上げの時期です。

   
写真 5(左):ピンク系ダブルのスポット とても艶やかな1株
写真 6(右):レモンイエローのダブルに紫のピコティとベインが入る極めて可憐な花姿
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