兵庫県立農林水産技術総合センター

センター雑感

当センターの各部署が順に担当して、季節の風景や出来事など様々な話題を紹介します。
 今月は 水産技術センター 水産環境部 研究主幹 原田 和弘が担当します。
理想的な海の環境って…
 理想的な海といえば、どのような海を想像されますか。ハワイや沖縄のような青く澄みきった海を思い浮かべる方も多いと思います。瀬戸内海は、戦後の社会変化や産業の発展に伴って、大きく環境が悪化した時代がありました。当時は家庭や産業排水の流入及び埋め立て地の拡大等によって水質悪化が進み、瀕死の海とも呼ばれていました。その後、水質汚濁防止に関する規制や下水道の整備等が進み、水質はかなり改善してきました。
 兵庫県を含め、瀬戸内海の水産研究機関では、公害が社会問題化していた1970年代から各地域沿岸の漁場環境を、現在に至るまで40年以上にわたり調べ続けています。水質が悪化していた時代は、家庭や産業排水、農業肥料等から窒素やリンが過剰に河川や海に供給され、富栄養化した状況にありました。水産技術センターの観測結果でも、1970年代前半の播磨灘の窒素やリンなどの栄養分は非常に多かったのですが、水質浄化対策によって次第に減少し、現在では少なくなりすぎて貧栄養化しているとも言われます。
 水中の窒素やリンは、陸上の植物に肥料を与えるのと同様に、海の植物プランクトンの栄養源となる物質です。食物連鎖ということをお聞きになられたことがあるかと思いますが、海の中では大まかに植物プランクトン→動物プランクトン→小魚→大型魚というふうに、食う・食われるの関係があります。肥料が不足すると植物がうまく育たないのと同様に、水質浄化が行き過ぎると海の食物連鎖の基礎となる植物プランクトンの生育に影響を与えるのではないかという懸念があるため、海の栄養を適切に維持、管理することが検討されています。さらに、平成27年には瀬戸内海の水質に関する法律が改正され、従来の水質浄化に軸足を置いた施策から、豊かな海を目指す方向に大きく方針が転換されました。
 水産業にとっては、海の生物がたくさん育ち、水産業の振興に繋がる環境が理想ですが、海に関わる人々の暮らし、産業は多岐にわたり、海の環境に対する思いは様々です。水産技術センターでは水産業の振興と、環境保全が両立できるような、豊かな瀬戸内海を目指して今後も調査、研究に取り組みます。

姫路市白浜海岸のアマモ場


たつの市新舞子海岸の干潟
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