兵庫県立農林水産技術総合センター
私の試験研究
当センターの各部署が順に担当して、特徴的な試験研究等の実施状況を紹介します。
 今月は、農業技術センター 主任研究員  篠木 佑  が担当します。

暑さに強い稲オリジナル品種を開発するために

 「今年の夏は暑すぎる」最近、そんな言葉を毎年のように聞くようになりました。夏の暑さが厳しいときには、私たちの主食である“お米”にはどのような影響があるのでしょう?
 稲は7月下旬~8月下旬頃の暑い時期に穂を出し始めますが、穂が出てから20日間の気温が高すぎると米粒の外観品質(見た目)が悪くなってしまいます。普通、米粒(玄米)は透明なものを想像すると思いますが、厳しい暑さの中で育った稲では、白く濁って見えるものが多く現われるようになります(第1図)。

第1図 白く濁った玄米と透明な玄米
 白く濁った米粒が多く現われると米の等級(外観品質)が下がり、買取価格が下がってしまうため生産者の方々が困ってしまいます。兵庫県で多く作られている「キヌヒカリ」という品種は、特に暑さに弱いため、近年、大きな問題になっています。そこで私は、厳しい夏の暑さでも外観品質が悪くならない水稲品種の開発に取り組んでいます。
 暑さに強い品種を開発するためには、開発途中の品種が本当に暑さに強いのか、実際に栽培して検定しなければなりません。それを確かめるためには、どんな年でも安定的に“厳しい暑さ”を再現できる栽培方法の確立が必要になります。そこで私は、ガラス温室を用いて気温をコントロールしながらイネを栽培する方法を確立させました。この方法は、気温制御技術を利用して、ハウスの窓の開閉等を自動で行い、気温が足りない場合は、電気ヒーターによる加温を行うことで、安定的に“厳しい暑さ”を作り出すことができます(第2図)。

第2図 新たに開発した気温をコントロールするための仕組み
 2019年の試験では、温室内の気温は稲の栽培期間を通じて、外観品質が悪くなりやすい温度である27℃以上となり(第3図)、“厳しい暑さ”を再現することができました。また、温室のなかで暑さに「強」~「弱」とされる6品種を実際に栽培したところ、玄米の外観品質は「強」の品種ほど透明な玄米の発生率が高く、白く濁った玄米の発生率が低くなり(表)、この栽培方法が暑さに対する強さを検定するのに有効であると確認できました。

第3図 温室内気温と野外気温の推移(2019年)

表 温室の高温条件下で育てた稲6品種の玄米品質
 兵庫県オリジナル品種の誕生は、令和6年を目指しています。暑さに対する強さはもちろんのこと、生産者の方々が栽培しやすく、消費者の方々が「美味しい!」と言っていただける品種を目指して、これからも新品種開発に取り組んでいきます。
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