文字サイズを変更 文字を標準サイズにする 文字を大きくする
兵庫県立農林水産技術総合センター

私の試験研究

当センターの各部署が順に担当して、特徴的な試験研究等の実施状況を紹介します。
  今月は、農業技術センター 病害虫部 主席研究員 神頭 武嗣  が担当します。



                光を使って植物の病気を防ぐ


 我が国では、いちごは主にハウスでつくられますが、いちごを栽培する上で、様々な病害虫が発生し、被害を与えます。なかでも「うどんこ病」は、葉にも果実にも発病し、果実に発病すると商品価値がなくなるため、大きな問題となってきました。うどんこ病はうどんこ病菌というかびによる病害で、現在主に日本で栽培されているいちご品種はほとんどこの病気に罹ってしまいます。防除は農薬(殺菌剤)を中心に行われてきました。しかし、農薬を連用すると、薬に強い薬剤耐性菌が出現し、防除が困難になります。また、農薬を多用するこ
とは、消費者イメージにもよくありません。
                                             

 そこで、農薬のみに頼らない、別の防除方法について、検討しました。民間企業と共同研究し、試行錯誤の末、植物病害防除装置「タフナレイ」を開発しました。                                                                         

 この植物病害防除装置は、ハウスの天井部に紫外光照射装置を取付け、イチゴに光(紫外光)を照射することで、イチゴを丈夫にし、うどんこ病に罹りにくい体質にします(1)。紫外光と一口で言っても光の種類(波長)によって、短い方からUV-C(殺菌灯に使われる)、太陽光にも一部含まれるUV-B、可視光()に最も近いUV-Aに分類されます。植物病害防除照明装置で使われるのは主にUV-Bに該当します。紫外光というと、一般に「日焼け」を連想されます。しかし、紫外光は必要な光でもあり、紫外光が足りないと人間の体内でビタミンD産生がうまくいかず、欠乏症(骨粗鬆症など)にかかることもあります。

 植物にとっては、草丈の徒長防止、クチクラ層の肥大(葉がぶ厚くなる)などの効果の他、病気に対する免疫力が向上することや、イチゴの場合、果皮色が向上する傾向にあります。これは、いちごの果皮にはアントシアニンが含まれていて、紫外光に当たることでイチゴ体内でのさまざまな代謝が活発化し、アントシアニン合成が促進されるためです。うどんこ病の防除効果は図2のとおりで、左が紫外光を当てて、丈夫に育ち、うどんこ病に罹っていないいちごです。

  一方、右は紫外光を当てずに普通に育ったいちごで、激しくうどんこ病に罹っています。このように、紫外光を上手に利用すると、実際の病気の予防にも十分使うことができます。現在、さらに、バラを始め他の作物・病害虫に適用する研究を進めています。今後このような光防除技術が、兵庫県環境創造型農業の基幹技術として、普及することを期待しています。




                           

                            図1 タフナレイ(左)とタフナレイを設置したハウス(右)       
       


                             
                                                                 

図2 左:紫外光が当たって丈夫に育ったいちご   右:普通に育ってうどんこ病に罹ったいちご
(うどんこ病に罹らず赤色が鮮やかないちご)    (うどんこ病に罹って白くなった果実)
                                                   

私の試験研究リストページへ