兵庫県立農林水産技術総合センター
私の試験研究
当センターの各部署が順に担当して、特徴的な試験研究等の実施状況を紹介します。
 今月は、北部農業技術センター 畜産部 主任研究員 坂瀬 充洋 が担当します。

種雄牛精子の形態に基づく新しい受胎能評価法

牛の交配は、発情した雌牛に凍結精液を融解して人工授精で行われます。毎年子牛を産ませるためには、人工授精の成功率(­=受胎率)の向上が大きな鍵を握っています。人工授精の受胎率に影響を及ぼす雄牛側の要因として精液性状があげられ、その中でも①精液中の精子の数②活発に動く精子の割合③変形した精子の割合(奇形率)は重要な項目です。そのため、種雄牛として選ばれるためには、何回も精液検査を実施して、精液性状が良く、かつ精液が安定供給できることが重要です。

近年、精子数、活発に動く精子の割合及び奇形率に問題がないにもかかわらず、雌牛を受胎させにくい精子を産生する雄牛(受胎能低下雄牛)が存在します。そのような雄牛が種雄牛に選抜されると、県下の繁殖農家で受胎率の低下を招き、生産現場に大きな損失をもたらすため、事前に検出しておかなければなりません。兵庫県では、受胎能低下雄牛を検出するため①一般精液性状検査に合格した雄牛の凍結精液を、②あらかじめ雌牛をホルモン剤で過排卵処理し、③この雌牛に①の精液を人工授精して、④雌牛から卵を回収し、受精している卵子(受精卵)の割合(正常卵率)を調べる方法を用いています(図1)。この方法は確実に受胎能低下雄牛を検出できますが、複数回の検査が必要なこと、労力と時間がかかるなどの課題があります。

私の試験研究は、種雄牛の繁殖能力の新たな評価法を開発すること、また、種雄牛の不妊症の原因を究明することです。今回は、受胎能低下雄牛を検出できる簡易な評価法を開発したので紹介します。

新しい方法は、①凍結精液を融解して塗抹標本を作製する、②精子の頭部を蛍光色素で染色する、③蛍光顕微鏡で観察して頭部の形態が正常な精子の割合を算出するという方法です。

新しい方法では精子の頭部は7パターンに分類されました(写真)。そして、従来の方法との関係を分析したところ、両者の間に高い相関関係がみられました(図2)。このことから、新しい評価法で精子の受胎能力を判定できることがわかりました。また、従来法と照合すると新しい方法の合格ラインは20%が適当であると考えられました。

 今後は、雄性繁殖能力の違いについて、生体からの情報や分子学的な側面から解析し、より精度の高い評価法の開発に取り組みます。

                                   
                    図1 従来の受胎能検査法の流れ




      





     
                                 










                                  





  図2 頭部形態が正常な精子の割合と従来法による正常卵率の関係
                                          

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