私の試験研究

当センターの各部署が順に担当して、特徴的な試験研究等の実施状況を紹介します。
今月は農業技術センター 上席研究員 加藤雅宣が担当します。

酒米「山田錦」における温暖化対策ための田植日を予測するシステムの開発

1 開発の経緯

兵庫県の北播磨地域や阪神・神戸の北部地域は、量・質ともに酒米「山田錦」の世界一の産地です。ところが、1998年以降、登熟期(稲穂が実る時期)の高温により、米粒の外観品質(検査等級)の低下や酒造への悪影響が見逃せない年もあり、その適応策が求められています。そこで、適応策の一つとして、登熟期の高温を回避する田植日をピンポイント(圃場毎)に推定できる「山田錦最適作期決定支援システム(平年値)」をExcel VBAを用いて開発しました(図1)。

   
図1 「山田錦最適作期決定支援システム(2013年)」主な操作手順

2 システムの概要

このシステムは、主に以下に示す2つの研究成果から構成されています。
(1) 品質が高く良好な酒造りが期待できる登熟期の気温条件は、出穂後11~20日の平均気温が約23℃であると明らかにしたこと。
(2) 中山間地域を含む産地の地形要因を緻密に反映させた50m区画(メッシュ)単位の日別平均気温(平年値)データを開発したこと。
 一方、ピンポイント(圃場毎)に田植日を推定するには、圃場の位置情報(緯度、経度)と出穂期(5割の稲穂が出現する日)が必要となります。そこで、まず、位置情報はインターネット上の地図サービス等も利用して取得できる仕様としました。次に、出穂期は、その推定を試みる圃場において、出穂後11日目から20日目の10日間の日平均気温が約23℃以下になる期間を特定します。最後に、田植日の推定に当たっては、田植日から出穂期を予測する計算式(予測モデル)を逆算させて推定しています。

3 活用方法

当初(2013年)、システムは「山田錦最適作期決定システム」の名称で、Excelファイルと推定に必要な日平均気温データをUSBメモリ-に保存し産地内の普及センター・農協等に配布しました。一方、生産者にとっては、栽培暦が馴染み深い物と考えられるため、利用しやすい紙ベース(B3版)の「移植日マップ」も作成しました(図2)。みのり農協管内の三木市吉川町内における地図を作成し、生産者全戸に配布も行いました。この移植日マップを活用すれば、栽培暦と比較して集落単位の細かな移植適期の表示がパソコン不要で手軽となり、実用性が高まりました。

   
図2 三木市吉川町の移植日マップ

背景図は「平成19年度作成三木市都市計画基本図」を利用しました。

その後、日平均気温(平年値)データの更新や田植日の予測精度の向上を図りつつ、2016年には産地全域を網羅させた「移植日マップ テスト版(中苗)」(http://arcg.is/2fRuhNX)*を完成させ、現在試験的にインターネット上のEsri社のArc GIS Onlineに公開しています。閲覧は自由に行え、マウス操作で場所の移動、ズームイン、ズームアウト等が容易に行えます。

なお、「山田錦最適作期決定支援システム」に関連する試験研究については、環境省のA-PLAT(気候変動適応情報プラットフォーム)にも紹介されています。以下のURLをご参照ください。

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