私の試験研究

当センターの各部署が順に担当して、特徴的な試験研究等の実施状況を紹介します。
今月は水産技術センター 研究員 長濵 達章が担当します。

「したびらめ類」の資源調査について

瀬戸内海で漁獲される魚の中に「したびらめ」と言われる魚がいます。ヒラメやカレイのように頭部の片側に眼がある平らな魚で、外見が動物の舌のように見えるので、この様な名前になったのではないかと思います。兵庫県の瀬戸内海側で漁獲されている「したびらめ類」は、主に「クロウシノシタ」、「イヌノシタ」、「コウライアカシタビラメ(図1)」、「アカシタビラメ」の4種類がいます。これらの魚は県内漁港の市場ではよく見られる魚ですが、これまで詳細な調査がなかったことから、その漁獲や生物の実態についてはあまりよくわかっていませんでした。

   
図1 コウライアカシタビラメ

そこで、主な漁業協同組合の統計資料を用いて近年の漁獲動向を調べてみました。漁業協同組合から収集した統計では、先の4種類が分離されておらず、「したびらめ類」としてまとめられていました。図2に「したびらめ類」の漁獲量の年変化を示しました。多くは播磨灘と大阪湾で漁獲されており、最近では年間300トン前後から100トン台へと減少の傾向にあります。

   
図2 海域別漁獲量の年変化

次に、漁法ごとの漁獲量の月変化を図3に示しました。「したびらめ類」の多くは小型底びき網で漁獲されており、主漁期は冬季~春季にありました。また、小型底びき網に比べると量こそ少ないものの、6月~8月の夏季には刺網での漁獲も見られています。

   
図3 漁法別漁獲量の月変化

近年の漁獲量は減少の傾向にあるようなので、したびらめ類資源を管理して、有効に利用していくことも必要になってきます。そのためには漁獲動向だけでなく、生物学的な情報も必要となります。そこで、浜の市場でよく見られるコウライアカシタビラメ(図1)から生物特性の調査を始めてみました。
 調査は水揚げされた魚を買い取り、実験室で全長や体重の計測、雌雄の判定や生殖腺の熟度の目視観察等を行いました。また、年齢を調べるために、頭部にある耳石を取り出し、薄層切片標本を作成しました。耳石には樹木と同じように年輪が形成されることがわかっていますので、顕微鏡を用いてこの年齢数を調べることにより、年齢が推定できます(図4)。今回は調査結果から「年齢と全長」や「全長と成熟」について紹介します。

   
図4 コウライアカシタビラメの耳石薄層切片

図5に雌雄別の年齢と成長の関係を示しました。雄は2~3歳位までに全長30cm前後に成長します。しかし、雌は同じような年齢でも40cm位まで成長する個体が多いようです。

   
図5 年齢と全長の関係

図6には雌雄別全長別の生殖腺の成熟状況を示しました。雄は全長25cm位から成熟が始まり、全長30cmではほとんどの個体が成熟するようです。雌は全長30cm位から成熟が始まり、全長35cmでほとんどの個体が成熟するようです。
 これらのことから、雄はあまり大きくならない代わりに、1~2歳の小さいサイズから成熟が始まります。雌は2歳頃から成熟が始まり、雄とは異なってかなり大きなサイズにまで成長するようです。

   
図6 全長と成熟の関係

今回はコウライアカシタビラメの生物情報の一部を紹介しましたが、クロウシノシタやイヌノシタの調査も順次始めています。いずれの種類も外見上はよく似た形をしていますが、その細かな形態や生物学的特性値が異なることがわかってきました。今後は、調査検体数を増やして情報の精度を高めるとともに、種類ごとの特性値の比較もしていきます。また、得られた情報をもとに、資源を継続的かつ有効に利用するための手法も検討していけたらと考えています。

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