私の試験研究

当センターの各部署が順に担当して、特徴的な試験研究等の実施状況を紹介します。
今月は企画調整・経営支援部 専門技術員 原田和文が担当します。

企画調整・経営支援部では、農業改良普及センターと連携して実用性の高い技術の現地実証を行い、普及にあたっての問題点の把握や改善対策の検討など、新しい技術の現地組み立てを行っています。

今回は「10aあたり15万円の投資で2割(15万円)の増収効果有り」。環境に優しい・ピーマンの日射制御型拍動自動潅水装置による安定生産技術の実証を紹介します。

1 目的

但馬ピーマンは、夏期の高温乾燥により、ピーマンの樹勢が低下し、尻腐れ果や日焼け果、着色果等の生理障害が多発して問題になっている。夏期の潅水方法は畝間潅水であるが、潅水の失敗により、水が溜まりすぎて根ぐされを起こす事例も多く、潅水には時間・労力も必要となる。そこで、土壌水分の安定を期待して、中国四国農試が開発した安価な日射制御型拍動自動潅水装置(以下、潅水装置と言う)を試験し、土壌水分と養分吸収を安定させることによる増収効果を検討した。

2 方法

(1)実証ほの設置場所

場所は豊岡市但東町奥藤、ほ場
 地目:水田(前作は水稲) 土性:埴壌土
 面積:実証区4a、対照区4a(同一ほ場)

(2)耕種概要

実証区、対照区共に、定植:5月14日~15日
 収穫:6月20日~10月31日
 栽植密度:900株/10aで、318本を試験に供試

   

(3)装置の概略

潅水装置の基本的構成は、①ろ過装置、②ソーラーパネル、③直流電動駆動ポンプ、④拍動タンク、⑤点滴チューブ配管である。水源から得た水をろ過し、ソーラーパネルによりポンプを稼動させ、時間をかけて低速で地上1.5mのタンクに揚水する。こうしてタンクに貯水された水は、一定の水位になると弁が開放して、点滴チューブにより潅水される。排水によりタンクの水位が下がると弁が閉じて、再度貯水が開始される。この繰り返しにより、晴天日には数多くの潅水が行われ、曇雨天日には潅水されない。潅水には、ハイドロゴル点滴潅水チューブを使用した。

   

3 結果及び考察

(1)潅水量

対照区では、8月4,8,13,17,21,26日の6回畝間潅水を行っている。

実証区では6月20日~10月26日にかけて、日射量に応じた潅水施肥が行われ、4a当たり合計59トンの潅水同時施肥が行われ、最も暑い8月初旬には一日一株当たり3.6Lの潅水が行われた。この結果、土壌のpF値*は、拍動自動潅水ではpF1.5~2の適正な範囲で推移したが、対照区では頻繁に畝間灌水を行ったにもかかわらず、8月下旬まで、pF2.3~2.5で推移した。

   
*pF値:土壌水分値

(2)施肥

実証区、対照区ともに、苦土石灰100kg/10a、窒素,リン酸,加里:12.8kg,9.7kg,22.4kg元肥施用した。対照区の追肥は7月19日~9月30日にかけて8回に分けて窒素成分で28kg/10a施用し、実証区(拍動自動潅水)は、拍動タンク内に70日タイプの肥効調節型肥料を7月8日に窒素成分で7kg、8月8日に3.5kg、9月16日に3.5kg投入した。実証区の窒素の総施用量は対照区の66%となった。肥料代は、10a当たり実証区21,000円、対照区16,625円となり、実証区の方が4,375円高くなったが、追肥作業の省力を勘案すれば、問題のない範囲と思われる。

(3)土壌分析及び植物体分析

8/11,8/18,8/25,9/1,9/12,9/22、各区の株間の畝の裾の土を3ヶ所採取し、測定した。栽培期間中の全窒素施用量は、実証区は対照区の2/3であるが、EC、硝酸態窒素は同様の値を示した。

また、収穫最盛期の8月25日に、収穫適期の実の上の葉を10株より採取し、葉柄をミキサーにかけ、植物体硝酸濃度を分析(RQフレックス)したところ、実証区は16,600ppm、対照区は9,800ppmであった。

両区を比較すると、8月25日の土壌中硝酸態窒素はほぼ同じであるが、植物体硝酸濃度は実証区のほうが約1.5倍と高いことから、施肥効率の高さが推察された。

(4)収量の比較

実証区は、全期間を通じて、1.5kg/株、約2割増収した。特に最も暑い8月中旬では、約45%収量が多くなった。

また栽培者によると、2LやLの比率が高かったとのことである。

実証区では適切な土壌水分の維持や効率のよい肥料吸収により、樹勢が安定したため、日焼け果や着色果が少なく、その結果出荷できる量が多くなったと推察できる。

   

3 まとめ

この潅水装置は夏期の収量を安定させる技術として有効であることが確認できた。さらに、対照区に比べ窒素量が2/3と少ないにも関わらず、収量は2割増となった。費用対効果の試算は、増収分による所得増は、15万円/10a程度で、ほぼ一年で投資額を回収できるものと考えられる。

以上をまとめると、

  1. 安定した養分吸収がなされ、増収効果が確認できた
  2. 適湿が保たれ、点滴潅水のためか、疫病などの土壌病害の蔓延は見られなかった
  3. 潅水装置のコストは1~5年で償却できる
  4. 投入窒素量が少なく、モーターの稼動には太陽光を利用することから環境にやさしい

4 今後の取り組み

今後3年をかけてデータの蓄積を行うとともに、土性や天気に応じた潅水量や施肥量のマニュアル化にも取り組んでいる。

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