私の試験研究

当センターの各部署が順に担当して、特徴的な試験研究等の実施状況を紹介します。
今月は企画調整・経営支援部 専門技術員 永井 秀樹が担当します。

The Fly Project

1 はじめに

畜産農家を悩ます衛生害虫のハエ。近年、その一種で吸血性の「サシバエ」が増える傾向にあり、大きな問題となっています。

平成18年12月より、兵庫県下でサシバエに悩む酪農家、関係団体(兵庫県酪連、農業改良普及センター等)の有志でプロジェクトチーム「The Fly Project」を立ち上げ、活動を始めました。その活動に中から、成果のあった対策を紹介します。

2 サシバエの被害

酪農家では、サシバエが大量に発生する時期に牛が神経質になり、「搾乳時に牛が落ち着かず、作業性が極端に落ちる」など、見過ごすことができない問題が発生しています。

吸血を受けた乳牛は、ストレスが高まり、飼料摂取量が減少し、乳量や増体量が低下します。長時間の立ち姿勢からくる肢蹄への負担や刺し傷からの乳房炎など、その被害は国内だけでなく海外でも多数報告されています。例えば、「サシバエ、ノサシバエによる被害はそれぞれ32億円、240億円にのぼる」(アメリカ農務省1954年報告)、「サシバエの数が増えると、牛を刺すために追いまわすようになり、それを避けようとして牛は互いに集まる。このことは牛を飼槽から遠ざけ、乳量は5~20%低下することがある。育成牛においても同様に、ハエの多いときには増体するどころか減少する場合もある。」(Western Dairy Business June 2000)などです。

さらに肉牛農家や繁殖牛農家でも増体への影響が懸念され、対策を実施する農家も増えつつあります。

   

3 サシバエの生態

一般的に知られているサシバエの特徴は下表の通りです。

   

サシバエの卵から成虫になるまでのライフサイクルは下図の通りです。

孵化したあと3回の脱皮を経て、サナギになり成虫になります。その期間は10日~26日と言われています。

   

なお、畜舎では「イエバエ」も数多く見られますが、大きさも似ており、一見見分けはつきません。またライフサイクルもよく似ています。「サシバエ」は、生物学上、「イエバエ」と同じイエバエ科に属しています。

サシバエの仲間は世界中にいますが、日本では6種類が確認されています。家畜への被害が多いのが、サシバエとノサシバエです。ノサシバエは主に高冷地の放牧場に生息しています。

さらに、私達が生育調査と観察をする中で次のような習性が明らかになってきました。

  1. サシバエは5月から7月前半にかけて増加し、その後、真夏は活動が少し停滞し、8月の後半からまた増えだし、晩秋まで被害を与える。
  2. サシバエは朝と夕に吸血するが、季節によって時間帯が変わる。夏は朝早くから吸血するが、春と秋は気温が上昇する昼に近い時間帯に吸血する。
  3. サシバエは気温が下がる晩秋を除き、吸血のために牛に近づく時間以外は、牛舎周辺の草むらや木陰で休息している。

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