私の試験研究

当センターの各部署が順に担当して、特徴的な試験研究等の実施状況を紹介します。
今月は北部農業技術センター 農業・加工流通部 主席研究員 真野 隆司が担当します。

但馬地域に適したナシ早生品種の選定

但馬地域で栽培されているナシは、9月収穫の二十世紀系品種が8割を占め、早生品種は4%程度しか栽培されていません。8月に収穫できる優良な早生品種の導入は、但馬地域の夏の観光や行事の需要に活用するとともに、収穫労力の分散、経営の安定化を図る上でも重要です。そこで、但馬オリジナルのナシ優良早生品種の収穫体系を確立するため、その果実特性を検討するとともに、消費者を対象に早生品種の食味アンケートを行いました。ここではその結果をご紹介します。

1 対象としたのは表1の5品種です。

   
(果皮:青=二十世紀のような黄色いナシ、赤=幸水のような茶色いナシ)

2 これらの品種の果実品質を、従来栽培されている早生品種と比較した結果は、表2のようになりました。

   

各品種の主な特徴は、

  1. 早優利:赤ナシで収穫期がもっとも早く、糖度は高いが小玉である。
  2. なつしずくは青ナシで、この時期のものとしては大玉で果皮が美しく、日持ちもよいが、早優利より少し糖度が低い。
  3. 真寿は大玉の青ナシで外観もよいが、糖度がやや低い。
  4. あきあかりは大玉で糖度も高い赤ナシであるが、酸度が低いため思ったより味が淡泊である。また、果実にスジが入る(条溝果)ことが多い。
  5. 但馬1号は大玉の青ナシで、果肉がやや硬いもののその分日持ちがよく、糖度も幸水と同程度あり、食味はよいが、果皮にアザの発生が多く、果実の軸と反対側に花のがく片が残る果実(有てい果)がほとんどとなるなど、外観が悪い。

といった、どれも一長一短のある結果となりました。そこで、実際に消費者に好まれる品種はどれか、アンケート試験を実施しました。試験には豊岡、新温泉の普及センター、JAはもちろん、香美、新温泉町両地域のナシの生産者の皆さんにもアンケート試験の実施に協力してもらい、消費者の反応を生で見て品種選びの参考にしてもらいました。

3 消費者アンケートの実施

2012年8月9日、8月23日の2日間、豊岡市のJAたじま直売所「たじまんま」および香美町の道の駅「村岡ファームガーデン」の両施設店頭にて消費者を対象にアンケートを実施し、被験者に各品種の外観と食味を相対評価させて行いました。

  1. 8月 9日:供試品種:早優利、なつしずく、対照品種:八雲、新水、被験者数:116名(うち豊岡市54名、香美町62名)
  2. 8月23日:供試品種:真寿、あきあかり、但馬1号、対照品種:幸水、早生二十世紀、被験者数:134名(うち豊岡市52名、香美町82名)
   

4 アンケートの結果は表の通りです。

   
(8月9日)
   
(8月23日)

8月9日のアンケート結果は、自分で食べるにも人に贈るにも青ナシのなつしずくを1位とした人が多くなりました(表3)。8月23日の結果も、青ナシの但馬1号の評価が高くなりました(表4)。

この結果から、盆前出荷を想定した早生品種としてなつしずくが、盆後から9月までの時期には但馬1号の評価が高く、但馬地域の早生品種として有望であると考えられました。やはり大事なのは味で、外観はわれわれが意識しているほど消費者は気にしていないことが分かりました。また、回答者に、「好きなナシの品種は?」という設問をしたところ、但馬地域の人は、他地域の人に比べ、1.5倍程度青ナシ(主に二十世紀)と答えた人が多くなりました。両日とも青ナシ品種の評価が高かったのは、回答者に但馬地域の人が多く、その人たちの嗜好が反映されたのではないかとも考えられます。但馬地域のナシは小さな産地ですが、まず域内需要を満たす、評判のよいナシを作ろう、ということで生産現場も、普及もこれから取り組んでいこうと意思統一したところです。

5 今後の展望

なつしずく、但馬1号の栽培方法を検討し、栽培マニュアルを作成して普及を促進します。また、但馬1号については生産者の要望も高く、品種登録を行う予定です。

   
図 ナシ「なつしずく」(左)と「但馬1号」(右)
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