開発した実用技術>水産>瀬戸内水産環境
開発技術名 「下水処理施設の栄養塩管理運転によるノリ漁場への栄養塩供給効果の実証」
技術開発の経緯
 瀬戸内海では海域の貧栄養化(特に溶存態無機窒素の不足)に伴うノリの色落ちが大きな問題となっており、県内では水産業界からノリ漁場への栄養塩供給対策に関する強い要望が上がっている。行政や漁業者等は、様々な栄養塩供給対策に取り組んできたが、兵庫県内において現時点では、供給量、継続性及び経済性等から下水処理施設の栄養塩管理運転が適切な方法と考えられている。しかし、栄養塩管理運転によるノリ漁場への栄養塩供給効果は、これまで明確にされていなかった。
開発技術の内容
 栄養塩管理運転で増加した窒素に限定して、ノリ生産への効果を抽出するのは非常に困難である。本研究では、明石市二見浄化センター及び加古川下流浄化センターの放流処理水を対象に、定期調査、連続観測、モデルシミュレーション及びノリの品質調査等の総合的な検証から、栄養塩管理運転によるノリ漁場への栄養塩供給効果を実証した。
ア 放流処理水の溶存態無機窒素は、栄養塩管理運転によって増加していることを確認した。
イ 下水処理施設の近隣に位置するノリ漁場周辺の栄養塩濃度分布や漁場における連続観測結果から、放流処理水は潮汐流に伴ってノリ漁場に影響を与えている可能性が高い結果を得た。
ウ シミュレーション計算から、栄養塩管理運転によって増加した窒素は漁場に到達していることを確認した。
エ 下水処理放流水の影響を受けやすい沿岸側の区画でノリの色調(品質)は良好であることを確認した。
期待する効果
 研究結果は、共同研究機関による事業成果の行政向け冊子「ノリ、ワカメ養殖場における栄養塩供給技術実証試験事例集(平成30年3月刊行)」や学会報告としてとりまとめ、瀬戸内海の水質(栄養塩)管理の在り方を検討するための知見として、水産や環境分野で活用されている。また、国土交通省では豊かな海を目指して、下水放流水に含まれる栄養塩類の能動的管理のための運転方法を検討しており、本県の研究成果も活用されている。2016年度現在、県内では20の下水処理施設の協力により、ノリ漁期を中心に栄養塩管理運転を試行しており、今後本格的な季節運転化が検討されている。
連絡先 水産技術センター水産環境部 078-941-8601   (作成者:原田 和弘)