センターからひとこと

(当センターの所長、次長、各技術センター所長等が順に執筆します。)
今月は 淡路農業技術センター所長 凾城 悦司 が執筆しました。

淡路島はご存じのように「花とミルクとオレンジの島」として、以前から農業と畜産の盛んな地域であり、最近ではレタス、タマネギ等の野菜並びに乳用牛、繁殖和牛の生産振興が盛んに行われています。その結果、レタス、タマネギ、白菜、柑橘類、カーネーション等は県内シェアの90%以上、生乳生産量や和牛子牛販売についてもそれぞれ41%と67%を占めており、県内有数の生産地となっています。
 従って、淡路の農業産出額は県下の約24%を占めており、平成17年では354億円(農業部門233億円、畜産部門121億円)であり、農業は主要な基幹産業となっています。
 これらの大きな産地を背景に、淡路農業技術センターは試験研究に対する多様化したニーズを的確に把握し、現地に密着した栽培技術の開発と実証試験に取り組んでいます。

そのなかで最近得られた主な研究成果として、農業部では ①カーネーションの養液土耕栽培技術の開発は、カーネーションを生産するのに最適な条件で潅水や施肥を自動化するシステムであり、従来の「勘」に頼った手作業に比べコスト低減、収量増、労働改善に大きく貢献しています。②レタスの高品質高収量技術の開発は、スポット施肥、マルチ栽培、ビッグべイン病防除技術を確立し、淡路レタスのブランド化の向上が図られています。③高圧ナトリウム灯利用による害虫防除技術の開発は、黄色ナトリウム灯に対するヤガ類の忌避効果で、野菜栽培において農薬使用を極力少なくし、環境にやさしい栽培技術の確立に大きな効果を発揮しています。

畜産部では ①乳房炎の早期診断と防除対策の開発は、小型近赤外線分光分析装置を用いた早期診断技術は、科学技術振興機構の競争的資金により工学系大学、国、企業等により共同研究を進めています。またハーブの一種であるステビアを用いた新たな治療薬とし特許を申請し、現在では全国的に広く活用されています。②乳牛の生涯生産性向上を目指した技術開発は、加速度センサーを用いた削蹄の評価並びに牛床に敷くマットの違いが蹄病の発生、横臥行動に大きく影響することを明らかにし、その中でもウレタンマットが最も快適であることを証明し、現地普及を図っています。③乳牛ふんの良質発酵堆肥の開発は、家畜ふんの水分調整剤としてロース誘導体ハイドロゲルを新たに開発、実証するとともに深型攪拌式発酵ハウスを用いた堆肥発酵処理を確立し、現地普及を行っています。

このように、数々の研究成果により地域農業の発展に大きく寄与しています。
 今後消費者は、より品質が良く安全・安心な農産物に対するニーズが一層高まることと思われ、それに対応するためには、消費者の要望に応えられる生産技術の開発が急務であり、地域農業を支える「現地密着型試験研究機関」として取り組んでいきたいと思います。