センターからひとこと

(当センターの所長、次長、各技術センター所長等が順に執筆します。)
今月は 総合センター次長(総務担当) 岡村 壽男 が執筆しました。

いま、新緑が美しく萌えています。
 ところで、年のはじまりは1月ですが、自然とりわけ生命のはじまりは3月から5月にかけての春で、昆虫などの動物が動き出し、草木もまた冬の眠りから目を覚まします。
 ソメイヨシノは、3月下旬から4月初旬にかけて蕾が割れて花が咲き、その後花びらが散って蕊が落ち、かわって若葉が姿をあらわし、逞しくなっていきます。そして、それは夏の強い陽差しを受けて樹体に滋養を蓄え来春への準備をし、やがて秋には落ち葉となって土へと返るのです。

そのような自然の輪廻、四季の巡りの中で、日本の豊かな文化が育まれてきました。
 食にあっても、清らかな水、豊饒の山や海の実りのもと、五感を精一杯躍動させる、自然と調和した文化として、私達は存分に享受してきました。しかし、そのことをごく当然のことと思い込み、それを失うこととなったらなどとは終ぞ考えたことはありませんでした。

昨年来、賞味期限表示の差し替え、産地や品質等の偽装、更には身体にとって有害な物質の混入など、食の安全、安心を根底から覆すような出来事が次から次へと起こっています。加えて、米国の住宅ローン問題に端を発しての原油など商品市場へのマネーの流入、温暖化によるエネルギー事情や世界の食事情の変化などもあり、農産物など食の素材の殆どを海外からの輸入に頼っている日本は、品薄や価格の高騰により困惑と不安が広がり、その対策が喫緊の課題となってきています。

時が経てば投資マネーなど諸状況も変わり、現在のような逼迫さは見かけ上は緩むかも知れませんが、喉元過ぎれば熱さを忘れて、そのまま何の手だてもとらずに放っておけば、食料生産の基盤は一層脆弱化し、日本の存亡を左右することにもなりかねません。将来を見据えて様々の課題を解決するには、新しい技術の創生と、それをうまく使いこなす人間の知恵が不可欠であり、日本のすばらしい、自然と調和した食の文化を取り戻すためにも、当センターの試験研究が大いに貢献できるよう、職員一同、その重責を感じつつ頑張っているところです。