センターからひとこと

(当センターの所長、次長、各技術センター所長等が順に執筆します。)
今月は 農業技術センター所長 大西 忠男 が執筆しました。

農業技術センターでは、農業を取り巻く環境の変化や現場のニーズを踏まえ「食の安全安心」、「ひょうごのブランド力の強化」、「循環型社会の推進」の方向に即して本県の特徴を発揮できる技術開発を行っています。
 作物・経営機械部では、水稲、酒米の新品種育成と栽培技術の改善、水稲、麦、大豆の奨励品種の選定、原々種・原種の生産と供給、農業機械の試作、農業技術の体系化、農作業労働管理の試験研究を行っています。
 園芸部では、施設栽培のイチゴ、トマト、キャベツなどの野菜類、キク、バラ、花壇苗などの花き類、クリ、イチジク、ブドウなどの果樹類、薬草の栽培技術の改善、新品種の育成や兵庫県に適する品種の選定などの試験研究を行っています。
 病害虫防除部では、農作物に発生する病害虫の発生生態の解明と防除法、有用動物、天敵微生物の利用の試験研究、農作物病害虫発生予察に関する調査を行っています。
 ここでは、園芸部で行っている「ひょうごオリジナルギク」の育種の取り組みを紹介します。
 兵庫県のキクは、切り花栽培面積の43%を占める主要花きの一つです。近年、東南アジア諸国からの輸入量が増加し、国内では産地間競争がますます激化してきました。そこで、産地の独自性を発揮するため、兵庫県花卉協会(キク部会)との共同研究で、キク部会員、研究員、専門技術員、関係地域普及指導員、農産園芸課、花卉協会事務局で構成する「育種検討委員会」を設置し、キクの育種に取り組んでいます。
 育種目標は、「葬儀や仏花以外でも利用できる洋花的な花形・花色のキク」の育成です。取り組み内容は以下のとおりです。

1 交配親収集と実生育成

2005 年にキク部会員から提供された58 品種を母親として、観賞用一文字ギク、美濃ギク20 品種を父親として交配し、採種、実生育成しました。

左:交配作業、右:交配で得られた種子の育苗状況

2 選抜

2006 年に育成した実生を神戸市、三木市、淡路市のキク部会員ほ場で栽培し、花の形質を重点に56 系統を一次選抜しました。その系統を2007年に園芸部にて栽培し、開花時期、草丈、花首伸長性、葉色、葉形、花色、花形、花径等を調査し、育種目標に合致した有望な7系統を二次選抜しました。
 本系統はいずれも一重咲き(一部半八重)で花径が11~18 cm と大輪で、従来の八重・盛咲きタイプとは大きく異なった特性を持っています。

選抜の状況
左から:10月上旬開花、10月上旬開花、10月下旬開花、10月下旬開花
左から:10月下旬開花、10月下旬開花、10月下旬開花

これらの系統以外に次のような八重咲き系統の選抜も行っています。

いずれも:八重咲きタイププ

現在、二次選抜した系統について品種登録に向け、市場評価に加えてPR を実施します。
 2008年の10月末には農林水産技術総合センターにおいて「ひょうごの新ギクを生ける」をテーマに選抜系統の生け花展示会を開催する予定です。
 また、選抜系統は大輪の一重咲きであることから、切り前の状態、出荷方法等を検討していきます。さらに新品種を狙って、一次選抜で得られた系統に対する戻し交配及び夏咲きギクを母親とした交配を実施しました。今後、これらの実生を育成、選抜し、新たな用途に利用される「ひょうごオリジナルギク」を作出する予定です。
 新品種が市場に出回るようになりましたら是非ご購入下さい。