センターからひとこと

(当センターの所長、次長、各技術センター所長等が順に執筆します。)
今月は 淡路農業技術センター所長 鳥飼 善郎 が執筆しました。

淡路農業技術センターにおける試験研究の取り組み

淡路島は兵庫県の約7%の面積(596km2)を有しており、瀬戸内の温暖な気候に恵まれ、古くから野菜や畜産と連携した多毛作、施設園芸などの集約的な農業生産が行われています。ちなみに淡路島の農業生産が県全体に占める割合は、農業では野菜が作付面積で約38%、花き59%、果樹18%、畜産では肉用繁殖雌牛が県下の飼育頭数の約60%、乳用牛が約45%となっており、名実ともに県下随一の農業地帯を形成しています

生産物の県内シェアでは「たまねぎ」「レタス」「カーネーション」が90%を超えており、これらはいずれも全国3位の生産高となっています。また、肉用子牛は神戸ビーフで代表される高級和牛肉の肥育素牛として全国各地に高値で取引されています。さらに当地は乳牛飼育の歴史が古く、西日本有数の酪農地帯となっています。

淡路農業技術センターでは、このような淡路地域の生産状況に配慮して、農業・畜産における課題解決を図るための試験研究や技術の実証・普及に取り組んでいます。

ここでは、今年度に取り組んでいる試験研究の中から、特徴的なものについてお話しします。

その一つは、畜産におけるエコフィードに関する試験研究です。現在、淡路島では環境立島「公園島淡路」の実現に向けて洲本市を中心に「菜の花エコプロジェクト」の取り組みが行われており、平成19年には搾油施設も完成し本格的にナタネ油の生産が始まりました。そこで、この搾油施設で発生するナタネ油粕を乳牛飼料に活用するための試験を実施し、牛乳への安全性を確認するとともに牛への給与方法の検討を行いました。 

近年は飼料価格の高騰が酪農経営を圧迫しており、地域自給飼料の掘り起こしと資源循環型酪農の実現に向けた有効活用が期待されています。

二つめは、「淡路島たまねぎ」のブランド化に向けた試験研究です。当地は全国有数のたまねぎ産地として知られています。現在、地元の農業団体が連携して、「淡路島たまねぎ」のブランド確立を図ることを目的に地域団体商標の登録を目指しています。この取り組みを支援するため、淡路産タマネギの食味・食感等の基本的な価値をデータ的に明確にするための試験研究を実施しています。将来は「淡路島たまねぎ」のブランド確立により、安全で品質のよいたまねぎが生産され、さらに優位な取引が図られるものと期待されています。

当センターは淡路三原平野のほぼ中央に位置しており、近隣には淡路島牧場や淡路ファームパーク・イングランドの丘などの観光施設やおのころ神社、慶野松原などの名所旧跡が数多くあり、年間を通して農業関係者はじめ多数の来訪者があります。農業の専門的研究機関としてJICAや農業関係団体の視察、トライやるウイークなどの小中高生の課外活動にも積極的に対応しております。この他、研究ふれあいデーの開催等を通じて、県民に開かれた試験研究機関として淡路地域をはじめとする農林水産業への理解に繋がるよう努めています。