センターからひとこと

(当センターの所長、次長、各技術センター所長等が順に執筆します。)
今月は 農業大学校 校長 武 正興 が執筆しました。

農業ってそんなに魅力的!

農業大学校のホームページを見てください。
 農業大学校は、高校を卒業し農業を目指す若者が農業技術と農業経営を学ぶ養成課程があります。
 もう一つに、農家やこれから農業を始めたいという方の各種短期研修を行っています。
 養成過程は少し定員を下回っていますが、各種短期研修は定員をオーバーする状態が続いています。

食と農を考える

私たちの命を支えている食料は全て命です。私たちは、尊い命を頂いているのです。
 その命を育てるのが農業です。
 動物は全て自分の食料は自分で確保します。人間も動物の1種です。自分で自分の食料を確保することが本来だと思います。
 しかし、今の日本の自給率は40%です。60%を他国の方々が育てた命を頂いているのです。

人類は、およそ500万年前にアフリカ南部で進化を遂げ「人間」になりました。
 日本人は、およそ5万年前に生誕の地から長い年月をかけてアジア大陸を横断し、日本にやってきました。
 私たちの体は、その間にアジア大陸や日本で取れる食料に適した体に進化してきました。
 米と豆と野菜そして魚介類を食料とする体になりました。
 ヨーロッパに移動した人たちは、草を食べる家畜を飼い、その乳と肉を食べ、小麦を食べ、水の代わりにアルコールを飲む体になりました。
 果たして私たちは、何を食べれば最も体に適しているのでしょう。
 私たちの体に適した作物は、私たちの地域では大変作りやすい作物です。また、その作物を作るために先祖代々水田を作ってきました。

今!日本の農業は疲弊寸前です

日本では、日本伝来の食べ物だけでなく、世界中の食べ物を食べています。
 それも素材を買って、家庭で料理せず、外食、中食、加工・冷凍食品等で賄うことが増えています。
 スーパーの店頭の野菜売り場には、それほど外国産の野菜は売っていません。
 しかし、外食・中食・加工食品の原料は、輸入農産物がたくさん使われています。
 外食等が増えることが食料自給率を下げています。
 たくさん輸入される安価な農産物が国内産の農産物の価格を引き下げ、農業の再生産ができなくなっています。

食と農に関心がある人が増えています

農業は3K(きつい・きたない・きけん)と言われ、サラリーマン並みの所得を得ることが難しい産業です。
 しかし、今!食料の自給(食の安心)、食の安全、人間本来の生活のあり方(非生産的な仕事から生産的な仕事へ)、太陽と土と 水の恵みを巧みに利用し、命を育てる農業の魅力(生命の不思議の探求、育てる喜び、自然と調和した生活等)から「そんなに収入が多くなくても農業を仕事にしたい。」、「都会を離れ、農村で野菜作りを楽しみながら暮らしたい。」という方が、農業大学校の短期研修に続々と押しかけて来られます。

不景気と農業は正比例?

経済が発展する時は、農村から労働力が流出し、不景気になると失業者の受け皿になる農業・農村。
 こんな失礼なことはありません。農業を生業とすることは、そんな簡単なことではありません。
 食料である命を育て、食料を生産しない人たちの命を支えているというやりがいと自負を持って頑張っている農家の人たちは、立派な技術、経営感覚だけではなく、人間が生きていることについての巌とした哲学を持っておられます。それでなければ、3Kだと言われる農業は続けられません。

自分を発見する

食や農を考えることは、本当に自分を発見する唯一絶好の機会だと思います。
 農業大学校で自分を発見してみませんか。

左:養成課程実習 いちごの生育調査、右:就農チャレンジ研修ホウレンソウの収穫
左:実践農場研修期間 1年間、右:就農チャレンジ研修ビニルハウスの建設