センターからひとこと

(当センターの所長、次長、各技術センター所長等が順に執筆します。)
今月は 淡路農業技術センター 所長 鳥飼 善郎 が執筆しました。

兵庫県における酪農試験研究の取り組み

新年あけましておめでとうございます。皆様には希望に満ちた新しい年をお迎えのこととお慶び申し上げます。
 本年もどうかよろしくお願い申し上げます。

さて、今回は酪農に係るお話です。
 兵庫県における酪農の歴史は、今から110年を遡る明治33年(1900年)に、三原郡八木村(現、南あわじ市八木)にホルスタイン種子牛が導入され、乳牛の育成繁殖が開始されたことに始まります。大正~昭和初期の揺籃期(ようらんき)には幾多の苦難を克服し酪農が各地に浸透していきましたが、戦後には、経済成長とともに牛乳が国民の健康増進に重要な食品として注目されるにしたがって、淡路を中心に阪神・播磨・丹波などで酪農が盛んとなり西日本を代表する酪農地帯へと発展しました。現在でも、淡路島には県下の乳牛の45%に当たる約1万頭が飼育されています。
 このような歴史的背景から、淡路農業技術センターは昭和56年4月の開設当初から県下の乳牛改良と酪農研究の拠点としての役割を担ってきており、乳牛の効率的な増殖や生産性を向上させるための飼養管理技術の研究開発に取り組んでいます。
 ここでは、当センターの主な取り組みについてご紹介します。 

一つめは「乳用牛の改良と増殖」です。

先端技術である受精卵移植を活用して血統的に能力が優れた雌牛を効率的に増殖し、改良基礎牛として酪農家に供給しています。
 特に平成5年度からは北米輸入牛や北海道導入牛から受精卵を採取し県下の酪農家に供給するなど、泌乳能力が高くて長命で飼いやすい牛群づくりを進めてきました。
 これまでに、県下で130頭余りの受精卵移植生産子牛が登録され、改良基礎牛として活躍しています。

二つめは「低コスト生産のための乳牛飼養技術の開発」です。

乳牛の繁殖成績の改善や分娩前後の病気予防による生産性の向上を図るとともに、稲ワラや未利用資源(エコフィード)について乳牛への給与法と有用性を検討するなど、低コスト経営を実現するための試験研究を進めています。
 また、牛乳が生産されている牛舎の衛生環境の検証を行い、ひょうごブランド牛乳生産のための生乳品質評価基準の作成に取り組んでいます。

三つめは牛群検定の指導です。

酪農家では毎月1回、乳量や繁殖成績などの能力を調査する牛群検定が行われ、そのデータが全国集計され整理されて検定成績表として返されています。
 当センターは兵庫県の牛群検定情報分析センターとなっています。そこで、毎月フィードバックされてくる膨大な成績をより分かりやすく解析して情報提供し、酪農家の経営改善に役立てています。

酪農は牛乳消費の低迷や生乳の安全確保など、課題が山積しており大変厳しい状況にありますが、淡路農業技術センターでは、力強い兵庫酪農の持続を図るために研究成果の速やかな伝達普及に努めていきます。