センターからひとこと

(当センターの所長、次長、各技術センター所長等が順に執筆します。)
今月は 北部農業技術センター 農業・加工流通部長 小松 正紀 が執筆しました。

北部農業技術センター 農業・加工流通部の概要と成果紹介

朝来市和田山町安井にある北部農業技術センター農業・加工流通部は、平成21年4月に農業部と食品加工流通部がひとつになり新たに発足しました。
 農業部門では、主幹作物の早期水稲や酒米をはじめ、丹波黒大豆、大納言小豆等特産豆類、野菜では夏秋ピーマン、夏出しダイコンや初夏どりキャベツ、また有機野菜の先駆例であるホウレンソウや伝統野菜の岩津ネギ、ヤマノイモさらに県北果樹を代表する二十世紀ナシ等の地域特産作物を対象に、但馬・丹波地域に適応する優良品種の選定及び栽培改善のための技術開発、実証試験を行っています。
 加工流通部門では県産農林水産物の品質評価により、地域特産物の優位性向上につながる技術開発を支援するとともに、生産から流通、加工に至る新しい地域産業の創出や、実需者の求める食品素材として県産品利用促進に貢献しています。
 今回は、野菜関係の最近の研究成果を紹介します。

1 夏秋ピーマンの増収、高品質生産の決め手「ソーラー自動点滴潅水」

但馬一円をエリアにした夏秋ピーマンが国の野菜指定産地として、関西一の産地となり、たじまピーマンとして高い評価を得ています。現在栽培者は199名、出荷量は642t、販売金額166,012千円となっています。夏秋ピーマンの大きな特徴は6月上旬から11月下旬まで約6ヵ月間収穫が続くことです。しかし夏場温暖化の影響もあり尻腐れ果、着色果などの発生が多く品質・収量低下を招くことが大きな栽培上の課題です。
 そこで(独)近畿中国四国農業研究センターで開発された日射制御型拍動自動灌水装置を利用することにより夏場の障害果の発生を抑えられ、収量も増加することを明らかにしました。またこの装置は電源のないほ場にも設置でき、しかも約15万円/10a程度と比較的安価に導入できます。すでにたじまピーマンでは25戸の栽培者で利用されています。またピーマンに限らず、ナス等の夏秋野菜や施設野菜、花き、果樹にも広く活用できる技術です。

日射制御型拍動自動潅水装置の概略図
左:栽培ほ場への設置状況、右:拍動潅水時の施肥量と収量

2 枝豆用大豆の新品種「黒っこ姫」、「茶っころ姫」

兵庫県は、丹波黒大豆の枝豆が有名で、特に10月上旬からは丹波を代表する味覚のひとつです。しかしもっと早い黒大豆枝豆があればという声から「早生ダダチャ」と「丹波黒」を交配し、丹波黒枝豆より半月早くから収穫できる「黒っこ姫」と既存茶枝豆より1か月遅く収穫でき、ダダチャ特有の香りと風味を持つ「茶っころ姫」を育成しました。
 両品種は平成20年3月に品種登録され、山陽種苗株式会社と小林種苗株式会社から販売されています。
 直売所向けや市場出荷向けの枝豆として、また家庭菜園でも味わってください。
 ただ両品種とも枝豆用品種ですので枝豆として全量利用することにしてください。

「黒っこ姫」

草姿は丹波黒と比べやや小さく、着莢数は多く莢密度は高い。2粒莢数が多く、収穫適期には生子実はうす紫色を帯びる。

「茶っころ姫」

草姿は丹波黒と比べやや小さく、着莢数は多く莢密度も高い。莢はやや小振りで2粒莢が多く、生子実は鮮やかなうす緑色。