センターからひとこと

(当センターの所長、次長、各技術センター所長等が順に執筆します。)
今月は 淡路農業技術センター所長 鳥飼 善郎 が執筆しました。

淡路地域における農業試験研究の推進と今後の課題

今回は、淡路地域の農業試験研究の推進と課題についてお話しします。

淡路島は、瀬戸内海の温暖な気候に恵まれ、古くから野菜や畜産と連携した集約的な農業生産が行われています。農業産出額でみれば県全体の産出額のほぼ25%を占めています。主な農産物では、「たまねぎ」「レタス」「カーネーション」が県内シェアの90%を超えており、これらはいずれも全国3位の生産高を誇ります。

また、畜産は、飼育頭数で和牛の雌牛が県下の約60%、乳牛が約45%を占めています。特に、南あわじ市は兵庫県の酪農発祥の地であり、現在でも、西日本有数の酪農地帯として知られています。

このように淡路島は、名実ともに県下の重要な農業・畜産地帯でありますが、淡路農業技術センターでは、こういった状況に配慮して、農業並びに酪農における課題の解決のための試験研究や技術の実証・普及に取り組んできました。

農業技術に関する最近の主な研究成果の一端をご紹介しますと、

農業では、①レタスビッグベイン病の汚染程度に応じた総合防除体系の確立、②緑色蛍光灯・黄色蛍光灯・高圧ナトリウム灯など光を利用した花き・レタスのヤガ類防除、③畝内施肥同時畝立て成型マルチャーを用いたレタス施肥の減量・省力化技術など、があげられます。

農業の試験研究については、「新鮮で高品質な生産物の安定供給」と「生産性の高い経営の実現」を目的に、先進的・体系的技術を開発する、ということを基本に取り組んでいますが、現在、淡路における農業の持続・将来ということで重要だと考えていることがあります。

一点目は、病害虫のことです。この地域では、非常に集約的な土地利用が行われているため、連作や高度利用による病害虫対策が重要となります。地球温暖化の影響も検討が必要です。近年は、新たな被害も報告されており、効果的な対策の早期確立が大きな課題となっています。

二点目は、地力の維持のことです。ご承知のように、南あわじ市でも酪農家が年々減少して畜産堆肥が不足しています。そのうえ、世界的に肥料需給が逼迫し価格が高くなっています。これからは作物の栽培履歴や施肥記録を検討して地力を適正に維持・管理することが大切です。このことが、ひいては、「豊かな土づくり」と、「安全で品質の高い農産物の生産」につながると考えています。

三点目は、農作業の安全確保のことです。農作業中の死亡事故は毎年400件前後(全国ベース)で推移しており、近年は高齢者の割合が増加し問題となっています。また、大学などの調査では農家の9割が、刈り払い機などの農作業時にヒヤリハットを経験しています。

当センターでは、これまで農業改良普及センターや農機具メーカーと連携してタマネギ堀取り機やタマネギ苗の移植機等の開発に取り組んできました。事故の要因は高齢化、大規模化、省力化など様々ですが、ほ場作業の機械開発については安全性への配慮が重要です。

今後も淡路農業技術センターでは、これらの問題の解決を図りつつ、①野菜生産での減農薬・減肥料による環境にやさしい生産体系及び気候変動に対応した安定生産技術、②安全で効率的な病害虫防除技術の開発など、に取り組んでいきます。