センターからひとこと

(当センターの所長、次長、各技術センター所長等が順に執筆します。)
今月は 森林林業技術センター所長 大石 房男 が執筆しました。

昨年11月、宍粟市一宮町安積に「兵庫木材センター」がオープンいたしましたが、今回は、この施設についてご紹介させていただきます。
 まず、はじめに、この施設の目的は、①品質、価格、供給力で外材に対抗できる県産木材を供給する。②低コスト搬出システムにより原木を生産することにより森林所有者に利益を還元することです。これらのことによって、持続可能な資源循環型林業が構築され、健全な森林の育成が可能になってきます。このため、①製品の大ロット・安定供給体制の整備②製品の品質と性能の向上③施業集約化による原木生産能力の強化を図っているところです。

写真1 兵庫木材センターの全景

(この施設が設置された背景);県内の森林資源の成熟と低コスト搬出システム技術の開発

昭和30~40年に植えられたスギ、ヒノキは、これまで、保育を目的とした間伐を行ってきました。これから、このまま成長させると木が混み合ってしまうので、いよいよ、大きな木を間伐し搬出していくことが必要となってきたのです。年数のいった林分の森林管理を行う時期になったのです。

しかし、昭和39年に木材輸入が全面自由化されたことによって木材価格が低迷(通常スギでmあたり10,000円前後)してしまい、また、搬出コストの方は人件費等の高騰により高くなったため、山から木を伐り出しても、採算に合わなくなっていました。その中で、考えられたのが、欧米諸国ですでに用いられていた高性能林業機械の導入でありました。県内の一人の素材業者の方が、高密路網(作業道)と高性能林業機械(プロセッサ[枝払・玉切・集積作業機械]、フォワーダ[積載式の集材作業車両]等)を駆使して列状間伐(植栽されたスギ、ヒノキを2列残して1列を伐るような伐採方法)によって低コスト搬出システム技術を開発しました。

写真2 高性能林業機械での搬出システム

このことで、木材の搬出コストを大幅に低減(mあたり5,000円以下)させることが出来、森林所有者に利益を還元することが可能となり兵庫県の森林管理の将来展望が開けてきたのです。
 しかし、何分、この高性能林業機械を1セット導入するには、7千万円程度かかるわけで、この導入経費に見合った木材(年間2~3万m)を搬出していく必要があります。また、このシステムによって生産された大量の原木を、そのまま原木市場に出せば、既存の製材所の需要をオーバーするため、原木の値崩れや売れ残りを出すことが懸念され、既存の流通システムのほかに新たな流通システムが必要となりました。

(この施設のみどころ);ワンウェイ製材システムとグレーディングマシンによる製品の品質管理

兵庫木材センターでは、原木を山から工場に直送し、原木選別機で径級ごとに選別し、リングバーカーで剥皮し製材工程に搬入されます。製材システムは、ワンウェイ超高速システム(原木を往復させないで、原木を入り口から投入したら出口から製品が出て来るようなシステム)で、8秒で1本のペースで原木を製材できます。柱に換算したら生産量は、1日(7時間稼働)当たり2千本となります。
 製材された後、人工乾燥機(高温高速タイプ)で乾燥し、養生した後、仕上げ加工施設でモルダーがけを行い、マイクロ波水分計で含水率測定、打撃式グレーディングマシンで強度測定を行い、品質をチェックした後、製品出荷となります。なお、県内で機械による製品の品質管理をしているのは、兵庫木材センターだけです。

左:写真3 原木選木機、右:写真4 ワンウェイ製材システム
左:写真5 木材人工乾燥機、右:写真6 打撃式グレーディングマシン

最後に、森林林業技術センターと兵庫木材センターとのかかわりについて主なものを紹介しますと、当センターでは、毎年、低コスト搬出システム技術の研修を実施し、技術普及に取り組んできました。また、製品の品質管理においては、兵庫木材センターのグレーディングマシンによる品質管理が適正に行われて確認しているところです。
 森林管理においては、県民緑税の導入などによって公的な森林管理がなされていますが、本来は、木材利用によって森林管理をすることが、ベストだと考えています。兵庫木材センターの稼働を契機に本来の林業の姿である資源循環型林業を再構築したいものです。