センターからひとこと

(当センターの所長、次長、各技術センター所長等が順に執筆します。)
今月は 但馬水産技術センター所長 堀 豊 が執筆しました。

日本海における海洋のモニタリング

但馬水産技術センターでは、本県日本海側の海の環境がどうなっているのか、生物資源の動向がどうなっているのかを把握して、漁業者に情報を提供することを大きな目的として、海洋のモニタリングを続けています。
 陸上や大気の環境については、気象庁が気温や気圧、紅葉の時期が早いか遅いかといった生物の情報も含めて情報提供してくれますが、海の環境についてはほとんど情報を得ることはできません。特に海底の近くや、海面と海底の中間の様子というのは、各都道府県の調査船が、長い年月にわたって、継続して取得してきている水温・塩分の値や、魚、イカ、カニなどの生物に関する情報によってしか把握することができません。海の環境のモニタリングというのは、都道府県レベルの調査によって賄われているというのが実態です。

当センターでは、「沖合漁場開発調査」、「底びき漁場開発調査」、「資源評価調査」などにより、水産資源や環境のモニタリングを行っています。今年も8月17日から20日までの4日間にわたり、「底びき漁期前調査」を実施しました。この調査では、9月から始まる日本海の底びき網漁期の直前に、決められた調査点で生物資源のモニタリングを行うことにより、その年の漁場の状況を判断する材料を提供します。漁期初めはハタハタを狙う船が多いので、どの場所でどれくらいの量のハタハタが漁獲されたかが注目されます。今年は例年に比べ漁獲量が多く、豊漁が期待される結果となりました(写真1)。また去年、今年と同じ場所で体長30cmほどの立派なニシンが大量に漁獲されました。これは一昨年までは見られなかった現象です(写真2)。これらの調査結果と過去のデータとを比較することにより、漁業者の皆さんに有用な情報を提供することが可能になります。モニタリングは同じ場所で、同じ方法で、長い年月にわたりコツコツと情報収集を重ねることにより初めて成果を導き出すことができるのです。

日本海は瀬戸内海に比べ水深が10倍以上あり、調査対象海域も広いため、調査にかかる時間も費用も大きくなります。しかし日本海から漁獲されるズワイガニ、ホタルイカ、ハタハタ、カレイ類、ニギス、ベニズワイガニ、スルメイカ、ケンサキイカ、ソデイカ、アカムツ、クロザコエビ、ノロゲンゲなどたくさんの海の幸は、私たちの豊かな生活を支える重要な食材です。当センターでは、県民の求める新鮮でおいしい県産水産物が将来にわたり安定的に供給されるようにするためにも、調査船を用いた海洋モニタリングを継続して行きたいと考えています。

左:写真1 ハタハタ、右:写真2 ニシン