センターからひとこと

(当センターの所長、次長、各技術センター所長等が順に執筆します。)
今月は 畜産技術センター所長 宮奥 正一 が執筆しました。

第10回全国和牛能力共進会について

和牛の能力向上を目的に5年毎に開催される全国和牛能力共進会が10月25日~29日に長崎県佐世保市で開催されました。
 今回の全共には、北は北海道から南は沖縄まで、38道府県の参加があり、選りすぐりの和牛480頭(種牛305頭、肉牛175頭)が集結しました。

審査は、種牛の部においては、肉用種としての特徴を維持しながら「種牛性」の改良に重点を移すことを目標に改正された「種牛審査標準」を適用し、肉牛の部においては、牛肉の美味しさに繋がる光ファイパ一分光測光法による「一価不飽和脂肪酸(MUFA)」の予測値による脂肪の質の評価が今回から肉質の序列決定に関わることになりました。

審査区は、9つ設けられ、区分ごとに優等賞、1等賞、2等賞を決め、さらに序列がつけられ、出品牛の中で特に優れた形質、能力を持つ牛には特別賞が授与されます。

本県からは但馬牛19頭(種牛11頭、肉牛8頭)が代表牛として、7つの区分に出品し、優等賞に3頭、2組が受賞しました。但馬牛は一般的に他府県の和牛と比べて体格が小さく、体積、大きさを求める共進会の審査基準で不利と言われていますが、九州勢が上位を占める中、今回の代表牛は他府県に遜色のない出来栄えでした。

特に、美味しさのチャンピオンを獲得した肉牛は、牛肉の美味しさの指標となるオレイン酸などの一価不飽和脂肪酸の含有率が全国から出品された175頭の中で最も高く、特別賞である「脂肪の質賞」を受賞しました。神戸ビーフはこれまでその美味しさで世界の舌を魅了してきましたが、その美味しさを実証することができました。

長崎の審査会場では、来場者のすさまじい熱気の中、出品牛はいずれもよく調教され優雅な足どりを示していました。次回は、5年後に宮城県で開催されます。経済動物である限り審査基準に欠かせない体積の充実をどう克服していくかは依然課題であり、九州勢に負けない出品対策をどう練り直すか。センターとしても、肉質・肉量に加えて、但馬牛の美味しさを加味した改良、技術開発を今後一層進めていきたいと考えます。

   
兵庫県出品牛。左:第2区(前躯賞)、右:第7区(脂肪の質賞)