センターからひとこと

(当センターの所長、次長、各技術センター所長等が順に執筆します。)
今月は 北部農業技術センター畜産部長 福島 護之 が執筆しました。

北部農業技術センター畜産部では神戸ビーフ生産の基本となる但馬牛の種雄牛育成を中心とした改良を進めるとともに、雌牛や子牛の飼育管理技術に関する試験を行っています。

最近神戸ビーフにとって大きなニュースが入ってきました。平成26年7月8日にEUへの初輸出が行われ7月9日に2500kgがEUに到着したというものです。平成24年2月にマカオを皮切りに、香港、アメリカ、タイ、シンガポールなどへ輸出され平成25年度には総量として26.2tが海を渡りました。今回、大きな市場であるEUが加わったことは神戸ビーフの消費拡大が大きく進むことを意味します。

そこで、兵庫県では兵庫県肉用牛振興ビジョンを平成26年4月に策定し今後の肉用牛振興のための方策を公表しました。当センターでも肉用牛改良対策に取り組んでいきます。

個々の試験研究としては、今後新たに消費者から求められるであろう「おいしさ」の数値化を目指したものがあります。枝肉断面を写真撮影し、これを画像解析して「こざし」や「肉色」を数値化することに取り組んでいます。神戸ビーフの特徴である脂肪交雑のきめの細かさを数値化することは次第に実用化されつつあり、種雄牛選抜の指標として利用を開始しました。「肉色」については、消費者が注目する項目であることは認識されていましたが、今後、その指標作成に取り組んでいきます。

DNA育種については、但馬牛の多様性評価に利用することが可能となってきました。他県から種牛を導入しない、純血主義を継続していくためには、非常に重要な研究課題であると位置づけて、継続的に取り組んでいます。

種雄牛の改良が進むと子牛や繁殖雌牛の能力も向上し、それに伴って体格が大きくなるなど適切な飼養管理方法が変化していきます。但馬牛を適切に管理するための飼養管理技術の研究は重要であると考えられることから、継続して実施していきます。

当所の正面には、観光客が多い、人気の竹田城跡が見えます。しかし、平成22年の宮崎県での口蹄疫発生以来、但馬牛の種雄牛を守るために残念ながら畜産部への見学をお断りすることにしました。皆様のご理解をよろしくお願いします。

以上の研究を通して但馬牛の改良を実現し、神戸ビーフの生産基盤を安定化させる技術開発に取り組んでいきます。消費者の皆さん、世界に誇れる神戸ビーフを今後も、ご賞味ください。

左:肉量・肉質両面を兼ね備えた種雄牛『芳悠土井』、右:竹田城から見た畜産部全景