センターからひとこと

(当センターの所長、次長、各技術センター所長等が順に執筆します。)
今月は 北部農業技術センター農業・加工流通部長 福嶋 昭 が執筆しました。

北部農業技術センター農業・加工流通部は、但馬・丹波地域の気象、立地条件を活かした農作物の栽培技術の開発、地域特産物の生産拡大などに取り組む「農業部門」と味わい豊かな食生活を目指す品質評価技術と加工品の開発を行う「食品加工流通部門」で構成しています。農業及び食品加工流通部門は、県産農林水産物のブランド力向上のための試験研究を推進する上で密接な連携を図ってきました。

農業部門では、これまでコウノトリ育む農法支援技術開発試験において科学の目で本農法を検証し、生物多様性、雑草と米の生産量との関係を明らかにしてきました。現在、抑草と施肥管理技術による安定生産並びに食味向上試験を実施していますが、米の食味は施肥により大きく左右されます。そこで、加工流通部門は米の食味分析等を行い良食味米生産のための栽培法改善に的確に反映しています。

コシヒカリの栽培試験

特産豆類の「美方大納言小豆」では、播種期や施肥法の改善による収量安定技術開発を行うと共に、品質(色調、糖、遊離アミノ酸)や加工特性を解明しました。この栽培と加工分野の成果をJA、生産組合、普及センター、農林振興事務所、市町等で構成する「美方大納言小豆ブランド推進協議会」及び加工業者、香美町・新温泉町観光協会等で構成する「チーム美方ルビー」と連携し特性のPR・情報発信を行い商品の開発など需要拡大に努めています。

美方大納言小豆の栽培試験と子実

特産果樹の「アサクラサンショウ」では、幼木期の枯死が根の湿害によって起こり、耐湿性台木「フユザンショウ」で回避できることを明らかにしました。この方法等で安定的な栽培が可能となったアサクラサンショウの一次加工のための製造工程表を作成しました。さらに、変色せず利用まで冷凍保存可能な一次加工製品の開発により、軸を取り除いた一次加工品、佃煮及び炊き込みご飯の素が商品化され販売されています。

アサクラサンショウの栽培試験と炊き込みご飯の素

さらに、加工流通部門では本県産の農林水産物や加工食品について、安全・安心を基本として付加価値を明確にした本県独自の「食」ブランドを確立するため、品質調査、製造所の衛生管理指導等を実施しています。

ひょうご安心ブランドの認証

ひょうご農林水産ビジョン2020(県農林水産業・農山漁村に関する各種施策の基本となる計画であると共に、すべての県民の食と農に関する行動指針)の要点には、「農」が先導する食の安全・安心と地域環境の保全、産業としての力強い農林水産業の再生があります。

また、第3次行財政構造改革推進方策(平成26年3月策定)の基本方向として、農林水産物のブランド力を向上する技術開発、食と自然環境の両面から県民生活の安全安心を支える技術開発に重点化する、食関連等の民間企業や農林漁業者・研究機関と連携し新たな価値の創造を技術面から支える、が掲げられています。

これらの施策に対応するため、今後も多種多様な優れた県内特産農林水産物の味・栄養価や機能性成分等の特徴を明らかにするとともに、農業(栽培)部門とのさらなる連携を図り農林水産物のブランド化を支援していきます。