センターからひとこと

(当センターの所長、次長、各技術センター所長等が順に執筆します。)
今月は 農業技術センター 病害虫部長 相野 公孝 が執筆しました。

こんにちは、農業技術センター 病害虫部 兼 病害虫防除所の部長兼所長の相野公孝と申します。所属の名前のように、研究部門と行政部門との融合した部署となります。今回は本県における植物防疫業務・研究の取り組みと新しく発生した病害虫についてお話しさせていただきます。

本県は、北は日本海、南は瀬戸内海(一部太平洋)に面し、中央部には中国山地が東西に横たわっています。高原、平野、島々など変化に富んだ地形と、それに伴った様々な気候を示す地域で構成されます。また、それぞれの地域に根ざした多彩な農業が行われています。農業生産については、酒米(山田錦)、黒大豆(丹波黒)の生産が全国1位であり、ほかにレタス、玉ネギ、イチジク、カーネーションなど主要な農産物が生産されています。多くの作目とともに、それにしたがっていろいろな病害虫が発生します。

まず研究部門では、本県が推奨しています環境創造型農業を支援する技術を中心に病害虫防除の研究を行っています。農薬にできるだけ頼らない病害虫防除として、①天敵や拮抗微生物を用いた防除法の開発、②物理的(光)手法を用いた病害虫の防除技術などを行っています。①では、飛ばないテントウ虫を用いたイチゴのアブラムシを防除する方法(飛ばないナミテントウによるイチゴのアブラムシ対策)や、カビを用いてカビの病気を防ぐ技術(かびでかびの病気を防ごう)を開発しました。②では、紫外光を用いて、植物の病気に対する抵抗力を増やし、イチゴのうどんこ病などを防ぐ光防除システム「タフナレイ」を開発しました(光によるイチゴうどんこ病の防除)。

植物防疫業務は、農政環境部農業改良課が窓口となり、実務は病害虫防除所が行っています。1987年に4防除所が統合され、1防除所となり、2002年に農林水産技術総合センターの内部機関として現在の体制となりました。職員は所長1名、研究職11名、行政職1名 合計13名と中核防除員20名、一般防除員50名で構成されています。

防除所の業務として、指定有害動植物(25病害、56害虫)発生予察、重要病害虫(51病害、57害虫)発生予察を中心に病害虫診断、農作物病害虫雑草防除指針の作成及び農薬安全使用研修等を行っています。また、病害虫防除員の資質向上のため病害虫調査法研修会を実施し、さらに、今年度から水稲病害調査に関して、広く情報を得るために、県下13か所に設置している農業改良普及センターの調査結果を収集し、迅速でキメの細かい情報発信に努力しています。現在、予察調査結果の共有を目的として、防除所、農業改良普及センター及び防除員の行う調査野帳のフォーマットを統一し、入力ソフトの作成を行い、より早く詳細な情報を発信する準備を行っています(病害虫部ホームページ)。

近年、急激なグローバル化により、海外から多種多様な方法で、植物が輸入されるようになりました。家に居ながらインターネットを介して海外の商品が簡単に購入することができる半面、海外からの病害虫侵入の危険度が高まっています。不幸にも植物防疫の網の目をくぐって病害虫が侵入する可能性も否定することができません。また、検疫対象の病害虫でなくても、本県で新しく発生した病害虫も増加傾向を示しています。

ここ十年で新しく発生した病害虫は検疫対象の病害虫としてウメ輪紋病、ジャガイモやせいも病、検疫対象外の病害虫では、トルコキキョウ葉巻病、トマトすすかび病、キク茎えそ病、イチジクモザイク病、ブドウえそ果病、チャトゲコナジラミ、ミナミアオカメムシ、ピーマン炭疽病、レタスバーティシリウム萎凋病、レタス疫病、レタスピシウム萎凋病、バラ炭疽病等があります(ひょうごの農林水産技術No.181)。

特に、ウメ輪紋病は、2012年7月に伊丹市の盆梅育成園地で確認され、2013年2月に伊丹市、宝塚市、川西市及び尼崎市の一部が緊急防除地区に指定されました。今後、さらに、植物検疫の重要性を再確認し、県内での新病害虫の拡散防止に力を入れる必要があります(ウメ輪紋病リーフレット)。