センターからひとこと

(当センターの所長、次長、各技術センター所長等が順に執筆します。)
今月は 総合センター所長 渡邊 大直 が執筆しました。

一日、また一日と春の足音が近づいています。
 時折、思い出したように襲ってくる寒波に震え上がりながらも、田んぼの麦は日々大きくなっています。

農業大学校から、明日の農業に大きな夢と希望を抱いて、35名の若者が巣立っていきました。
 4月になると、また、40名の若者達が夢を実現しようと、入学してきます。
 農業の世界でも活躍する女性が増えてきました。
 農業大学校も年々女子学生が増え、OG達も様々な現場で頑張っています。

牛舎では、毎年、12頭の基幹種雄牛の座をめぐって熾烈なサバイバルゲームが繰り広げられています。
 但馬牛が自慢とする、美味しさ、霜降り。
 そして大きく育ち、娘牛達が子牛を産み、育てる力には、種雄牛の能力が大きく影響します。

また、遺伝的な多様性を保つことも重要な要素になります。
 今年は、「照村土井」と「茂初波」の2頭がサバイバルゲームを勝ち抜いて新たに基幹種雄牛の座を射止めました。
 神戸ビーフは兵庫県の輸出農産物のトップランナーとして年々輸出量を拡大しています。
 新しい基幹種雄牛には、“世界に誇る神戸ビーフ”を沢山作って欲しいものだと期待しています。

左:「照村土井」歩留抜群、右:「茂初波」熊波系再興へ

温室ではイチゴの収穫がそろそろ終わりになってきました。
 今年度はイチゴの新品種を2品種開発し、県民の皆様から「あまクイーン」と「紅クイーン」という愛称をつけていただきました。
 「あまクイーン」は、イチゴらしいカワイイ姿で、糖度が高く、ジューシーで柔らかい、摘み取り園向きのイチゴです。
 「紅クイーン」は、ボリュームのあるマッチョなタイプで、糖度と酸味が調和した歯触りの良いイチゴです。
 それぞれの特徴を生かして兵庫のエースに育っていくことを期待しています。

「あまクイーン」と「紅クイーン」

春霞に包まれて穏やかな表情を見せている山々も、近頃頻発している豪雨にみまわれると、とんでもない災害を引き起こすことがあります。
 こういった災害を防ぐうえで、山の荒廃を防ぎ、木々がしっかり根を張って健全に育っていくことが重要なポイントになります。しかし山の木々がどんなふうに根を張っているかというのは、“透視眼”でも持たない限り判りません。
 その“透視眼”の代わりに、地中探査用レーダーを使う研究に取組んでいます。
 まだ基礎研究の段階ですが、根の直径や根と土の水分の差、根の方向とレーダーを当てる角度による検出精度などが判ってきました。
 山に生えている杉の根の分布位置や大きさを検出する精度は70%を超えるところまできました。
 実用的な“透視眼”にして災害防止に役立てたいと思っています。

レーダによる樹木根の探査

山の向こうの日本海では、ズワイガニに小型発信器をつけて、深海でズワイガニがどのように行動しているのか追跡、記録することに世界で初めて成功しました。
 この調査で、ズワイガニは夜間に行動し、その行動は海底付近の海流と関係があり、放流したカニは、放流後5か月で、約半数がその場に留まっていることが判りました。
 この技術を使ってズワイガニの資源を守り、冬の但馬の看板“マツバガニ”の漁獲増につながるよう工夫していきたいと思っています。

発信機をつけたズワイガニ

こんな風に、農林水産技術総合センターの研究員達は研究に取組んでいます。
 3月も押し迫ってくると、H26年度の研究成果のとりまとめやH27年度研究計画づくりに忙しい日々が続いています。