センターからひとこと

(当センターの所長、次長、各技術センター所長等が順に執筆します。)
今月は 総合センター次長兼農業大学校長 松元 一師 が執筆しました。

はじめまして。

本年4月に次長(担い手育成担当)兼農業大学校長に赴任して参りました松元一師です。よろしくお願い申し上げます。

4月には希望と不安で胸膨れる思いだった1年生も、兵庫県立農業大学校に入学してはや4か月が経過し夏休みに入った今、それぞれが戸惑いの日々から充実の日々へと移行していることと思います。

農業大学校は次代の農業を担う感性豊かな人材育成を教育目標に運営されています。

その特徴の第一は、各学年40名定員の2年制の全寮制であることです(現在74名入寮)。1部屋2名で先輩後輩が同室で過ごし、その運営は学生自治会に委ねられています。高校卒業後すぐに入学する者が多いのですが、なかには大学卒の者や就職経験者もおり、時に個性がぶつかり合うことがあっても助け合い、たくましく育ちます。

教科課程は農産園芸課程(野菜・花き・果樹・作物専攻)と畜産課程の2つがあり、カリキュラムは講義による農業知識の修得と実習による実践技術の修得に大別され、時間割合が概ね1:1であることが特徴です。これは現場力の養成に必須のことであり、講師は農大職員の他、県立農林水産技術総合センターの研究員による先端技術等、内外の多彩な講師陣による講義と、広大な農場、畜舎で展開される実習との連携による相乗作用が図られています。

そのなかで、今回は野菜専攻のトマト栽培について紹介します。

野菜専攻では、ハウス・露地を組み合わせ、周年複数の品目を収穫できる作付け計画で栽培していますが、トマトについては、ハウスでの半促成栽培(5~7月穫り)、抑制栽培(10~12月穫り)に取り組み、長期間の収穫を行っています。

最盛期には日量100kgを超える収穫となりますが、実習のない日には午前9時の授業開始までに間に合わせるため、早いときには6時頃から他の野菜も合わせて、収穫・調整・袋詰め作業を行っています。今年は下葉の早めの摘み取り等の管理や節水管理により、甘くて味が濃いものができているとの評価を得ています。

収穫したトマトは、まず、農大の食堂に持ち込まれますが、文字通り、一緒に汗をかいて作った野菜や米を材料にした「同じ釜の飯を食う」ことにより、仲間意識も深まり、健康も維持され、食育にもつながります。学生からは作業の後の朝食の味が格別だとの声も聞きます。

また、毎週金曜日の農大内の直売所【夢花菜ゆめかさい】で販売されるとともに、兵庫県立フラワーセンター等の近隣施設へも直売しています。

さらに、6次産業化の取組として小野市の加工グループにケチャップの加工委託を行い、今年も秋の農大収穫祭や兵庫県民農林漁業祭で販売する予定です。

これらをとおして今後とも、安全・安心でおいしい農産物を提供できるよう、日々施肥・防除・収穫記録の記帳に学生が主体的に取り組み、JGAP※認定の取得を目指しています。

左:トマトの定植、右:「夢花菜」での販売(毎週金曜日開催)

一方、2年生の卒業論文作成では、トマトの着果促進のために行うホルモン処理作業や受粉昆虫(マルハナバチ等)のハウス内放飼を省略できる単為結果性品種を作付して、労働時間の削減効果や収量・品質の調査を行うことにより品種の有効性を検討する取組や、栽培上問題となる病害虫の対策として複数の天敵や生物農薬を組み合わせて活用し、化学農薬の散布回数を減らす取組をしています。地域での実践を目指したものに仕上がるよう、今後、ブラッシュアップしていきます。

左:品種試験の食味官能調査、右:青色粘着板によりスリップス類の発生状況の確認

さらに、農大では学生を対象にした養成部門の他に、社会人の就農希望者を対象にした就農チャレンジ研修(短期研修)を実施しています。また、新規就農者等育成研修(実践研修)では、1年間の長期にわたり農大の施設・機械を活用して、研修生が自ら樹立した研修計画に基づき野菜等の栽培から販売までを行います。

このような取組をしている農業大学校ですが、関係の皆様のご支援ご協力により学生・研修生が日夜勉学に励んでおります。今後ともその活性化に向けてよろしくお願い申し上げます。