センターからひとこと

(当センターの所長、次長、各技術センター所長等が順に執筆します。)
今月は 農業技術センター 農産園芸部長 澤田 富雄 が執筆しました。

12月10日、県立農林水産技術総合センター試験研究成果発表会【農業部門】が開催されました。今回は、「ひょうごブランド農産物の育成に向けた新品種の創出」と題して、これまでに兵庫県の育成作物の品種を中心に、現在取り組まれている品種試験について紹介しました。
 発表課題と概要は以下の通りです。

(1)病害抵抗性黒大豆系統の育成と利用法の検討

SMV(ウイルス)抵抗性の「兵系黒4号」、茎疫病抵抗性の「兵系黒5号」を育成完了し、本年度、品種登録申請予定です。現在養父市の特産品開発用黒大豆としての活用を検討中です。

(2)最新の小麦品種における新しい加工利用の展開

県産小麦には今、劇的な変化が訪れています。従来は不可能と考えられてきた様々な用途が考えられるようになっています。そのため、兵庫県では、従来の「シロガネコムギ」に加えて、麺用として「ふくほのか」、醤油醸造用として「ゆめちから」を奨励品種として採用し、現在、パン用として「せときらら」、パスタ用として「中国D166号」を検討中です。

(3)枝豆三姉妹(黒っこ姫、茶っころ姫、さとっこ姫)のブランド化に向けた取り組み

「黒っこ姫」は「丹波黒」より半月、「さとっこ姫」は1カ月収穫期が早く、これらと「丹波黒」との組み合わせにより、黒枝豆の販売期間の前進と延長をはかることができます。また、「茶っころ姫」は独特の風味を持つ茶豆で、現在は、茶枝豆の人気が高い東日本で多く栽培されています。

(4)兵庫県育成紫黒米品種を活用した健康食品の開発

「兵系紫86号」はアントシアン含量が非常に高い紫黒米品種で、本県育成の従来品種「ゆかりの舞」や「むらさきの舞」に比べて1.5倍のアントシアン含量です。株)ヤヱガキフード&システムで健康酢の原料として用いられています。本年度、品種登録申請を予定しています。

(5)早生ナシ(8月収穫)「但馬1号」の育成

「但馬1号」は県北部向けの早生種です。二十世紀系の品種が多く、収穫期のバリエーションの少ない但馬地域において販売時期の拡大と収穫労力の分散を解決するために生まれた品種です。8月中旬から収穫可能で、大玉で芯が小さく、可食部が大きい特徴があります。但馬特産青ナシとして、夏の観光客向け、あるいは地蔵盆向けの商品としての活躍が期待されています。現在、品種登録出願中です。

(6)イチゴ新品種「兵庫I-3号」、「兵庫I-4号」の育成

甘く、早期出荷可能な「兵庫I-3号」(愛称「あまクイーン」)、多収で大玉が得られやすく、果実硬度が高く、輸送性に優れる特徴を持つ「兵庫I-4号」(愛称「紅クイーン」)を育成しました。現在、品種登録出願中です。

(7)イオンビームを活用したキクの花色変異体の作出

キク切り花は、盆、彼岸(春・秋)、年末の需要期に合わせた赤紫、白、黄の3色の花色の出荷が求められていますが、近年の異常気象の影響で、開花期のずれが問題になっています。そこで、イオンビームを用いて開花期のずれの少ない花色変異体を作出し、現在、栽培試験と特性試験を行っています。

(8)生産者団体と連携して育成した ひょうごオリジナルギク「サンバマム」

洋花として利用できる新しいタイプの品種の育成を目標に、兵庫県花卉協会と共同開発したオリジナルギクが「サンバマム」です。現在2品種(兵庫花10号、11号)が品種登録され、2品種(兵庫花12号、13号)が品種登録出願中です。大輪の一重~半八重咲きの品種です。