センターからひとこと

(当センターの所長、次長、各技術センター所長等が順に執筆します。)
今月は 今月は 畜産技術センター家畜部長 清水 泰統 が執筆しました。

昨年4月に畜産技術センター 家畜部長に着任して、はや10ヶ月が過ぎました。

県職員となって30年あまり家畜保健衛生所などで、畜産行政関係の仕事(主に家畜の伝染病の検査や牛の予防注射)に携わってきました。今回、初めて試験研究機関に直接携わることとなり、私なりに見た畜産技術センターの試験研究等の概要を紹介させていただきます。

1 試験研究

畜産技術センターでは、主に但馬牛の肥育(大きく肥らせる)に関する試験を実施しています。

(1)飼料給与等に関する試験

牛の肥育には、一般的に濃厚飼料(麦などの穀物を混ぜたもの)と粗飼料(乾草や稲わら)を給与します。枝肉の成績向上(枝肉の重量や品質)により神戸ビーフに認定される牛を増やすため、牛に与える飼料の量や内容に関する試験を実施し、但馬牛肥育マニュアル(いつ、どのような飼料をどれくらい給与すれば良いか)を作成し、肥育農家への普及を図っています。さらに、新しい試験成績が出た段階でマニュアルを改訂し、神戸ビーフの認定率アップを図っており、年々成績が向上してきています。

また、現在は、より効率よく肥育するために「牛の第1胃(牛には胃が4つあり、その第1番目)の機能」に着目して、飼料効率をあげる(少ないえさで、より大きくする)方法についての試験等も実施しています。

(2)但馬牛の美味しさに関する試験

但馬牛、神戸ビーフは、一般的に美味しいといわれていますが、なぜ美味しいのか、何が美味しい原因なのかということを突き止めるための試験・調査を実施しています。

今までの成果で、牛肉の脂肪に含まれるオレイン酸などのモノ不飽和脂肪酸の割合が60%ぐらいが風味が良く美味しいと評価されることを確認し、その割合は種雄牛(父牛)によっても違いがあることを突き止めました。

また、それ以外にも牛肉の成分(アミノ酸等)を分析していますが、何が味に影響しているのかの特定には至っておらず、試験や調査を継続中です。

さらに、北部農業技術センターで実施している牛肉のロースに含まれるサシの大きさの分析で、市場関係者の評価は粗ザシよりも小ザシの方が高いというアンケート結果を得るとともに、その小ザシにも種雄牛が関係しているという結果を得ました。

これらのことから、モノ不飽和脂肪酸や小ザシに関する能力を育種価評価(子供に伝える能力を数字で表したもの)することで、次世代を担う種雄牛づくり(但馬牛の改良)にも活用していきたいと考えています。

※ どちらも、ロースの部分に含まれる脂肪の割合は49%です。
どちらが美味しそうですか?

小ザシと粗ザシ

2.人工授精用凍結精液の作成・保管

繁殖雌牛飼養農家(子牛を産ませる雌牛を飼っている農家)は、一般的には凍結精液を用いた人工授精により、子牛を産ませています。

当センターでは、基幹種雄牛(JA等を通じて一般農家に凍結精液を供給する雄牛)9頭、待機種雄牛(試験的に人工授精して能力が判明するのを待っている雄牛)24頭を飼養し、人工授精に必要な凍結精液の作成、保管を行っています。

原則、週に2回数頭の雄牛から精液を採取し、検査に合格した場合のみ凍結を行い、年間2万本あまりを供給しています。

職員一同、試験研究成果を活用してより能力の高い但馬牛への改良、より美味しい但馬牛、神戸ビーフの生産を目指しています。

※ 人気のある種雄牛 丸宮土井と芳山土井