センターからひとこと

(当センターの所長、次長、各技術センター所長等が順に執筆します。)
今月は 農業技術センター病害虫部長 前川 和正 が執筆しました。

農業技術センター 病害虫部兼病害虫防除所の部長兼所長の前川和正と申します。今回は病害虫・農薬についての研究の取り組みと植物防疫業務について紹介させていただきます。

研究部門では、本県が推奨しています環境創造型農業を支援するため、以下の3つについての技術開発に取り組んでいます。

  1. 化学農薬削減のための新しい防除技術の開発
  2. 難防除病害虫の発生リスク評価に基づく要防除基準判断技術及び効率的な防除方法の確立
  3. 農薬残留を出荷前に迅速判別する技術の確立

具体的には、①紫外光と反射シートを用いたハダニ類、うどんこ病の防除技術、②新規pH降下型肥料を核としたレタスビッグベイン病の防除対策、③拮抗微生物を用いたトマト青枯病の防除法の開発、④突発的多発生に対応したタマネギベと病総合防除等を行っております。

植物防疫業務については兼務の「病害虫防除所」として実施しています。防除所は各都道府県に必ず設置するように国が法律で定めた組織で、兵庫県には昭和27年、県内19か所に設置されたのが始まりです。昭和62年に県に1か所に統合されて、開所された当センター内に移転しました。平成14年には病害虫防除部(当時)としてセンター内部の組織に組み込まれました。

防除所の主な仕事は、作物に被害を及ぼす病害虫の発生を調査し、その発生程度・時期を予測し、その情報を迅速に関係機関に提供することです。そして発生に応じた防除指導を実施することで、農作物の安定生産と環境創造型農業の推進・指導に役だっています。

害虫の色々な調査方法についてご紹介します。写真4は、イネの株元にいるウンカなどの害虫を払い落として、その種類や数を調べています。これ以外に捕虫網でイネにいる虫をすくいとって調べる方法もあります。

昆虫は光に向かって飛んでいく習性がありますが、これを利用して虫の発生時期・量を調べるのが予察灯です(写真5)。これでイネを始め、色々な作物に寄生する害虫類の発生状況を調べます。

また、虫のオスはメスの出す誘引物質(性フェロモン)にひかれてメスに近づきます。その物質は基本的に同じ種類の虫だけを誘引します。その性質を利用して化学的に合成したフェロモンを利用して、虫の発生状況を調べるのがフェロモントラップです。写真6はネキリムシとして知られるカブラヤガという蛾のトラップです。

これらのデータを毎年集め、平年値を算出するなど解析して、気温・降水量など気象条件を加味し、さらに病害虫防除員・農業改良普及センター・農業共済組合等から提供された情報も活用しながら精度の高い発生予測をしています。その結果、重要な病害虫が多発すると予測される時には、程度に応じて注意報や警報を発表します。特に本年は春にタマネギベと病が多発したので、今後の発生を警戒しています。

さらに、防除所ではイネ縞葉枯病ウイルスのヒメトビウンカ保毒虫率調査等の重要な病害虫の防除指導、まん延防止対策も実施しています。また、ウメ輪紋ウイルス(PPV)を始め、各種の検疫対象病害虫の発生調査も実施しています。