センターからひとこと

(当センターの所長、次長、各技術センター所長等が順に執筆します。)
今月は 北部農業技術センター畜産部長 設楽 修 が執筆しました。

但馬牛とともに

北部農業技術センター畜産部は、天空の城「竹田城」の北に、平成5年但馬牛改良の拠点として整備されました。当部では、但馬牛の飼育管理に関する試験研究のほか、新しい種雄牛づくりや多様な血統の但馬牛雌牛の維持拡大などの業務を行っています。

   
北部農業技術センター畜産部の全景と後方山頂に竹田城跡

但馬牛については、鎌倉時代の末期に日本全国の優秀な牛10頭を記録した「国牛十図」にこのような記載があります。「骨ほそく宍かたく、皮うすく腰背まろし、角蹄ことにかたく、はなの孔ひろし、逸物おほし」これは、当時の但馬牛の特徴を記載したもので、「骨が細く、体が引き締まり、皮膚が柔らかく、背腰にデコボコが少ない。また、角や蹄が非常に硬くて質が良い。鼻の孔も広く、優れた牛が多い。」という意味で、但馬牛は当時から全国でも秀でた存在として認識されていた証拠です。

また、但馬牛は険しい山と谷に囲まれた但馬地方で飼育され、谷筋の中だけで交配が行われてきた結果、霜降り肉など優れた肉質の遺伝力がより強固なものとなりました。この手法は、現在も全国で兵庫県だけが取り組む「閉鎖育種」という方法で受け継がれています。

全国各地のブランド和牛の素牛である但馬牛ですが、平成24年に神戸ビーフが初めてマカオに輸出されたのを皮切りに、広く海外に輸出されて好評を博しています。さらに平成27年には「但馬牛(タジマギュー)」と「神戸ビーフ」の2点が、農林水産省が産品の確立した特性と地域との結び付きが見られる真正な地理的表示産品であることを証する「GIマーク」を取得し、さらに世界に飛躍しようとしています。

GIマーク(農林水産省ホームページより掲載)

このように、世界の舌を魅了する神戸ビーフですが、そのもととなる但馬牛の更なる能力向上には、県内の雌牛に交配する種雄牛が大きな鍵を握ります。交配に利用される基幹種雄牛に選ばれる前の種雄候補牛の管理を担当する畜産部の職員は、日々愛情を持って雄牛の世話を行い、献身的に但馬牛の発展に貢献しています。

種雄候補牛の手入れ