この文章を書いている今は7月末、今年の夏はことのほか暑さが厳しく、これからまだ8月があるかと思うと、げんなりしてしまう今日この頃です。淡路農技に来て4ヶ月、少しですが感じたことを書いてみます。
淡路島の面積は県全体でいえば7%、それでも農業生産額は県全体の25%を占め、とても生産性の高い農業地域であることが分かります。温暖で水稲→レタスまたは白菜→タマネギと、1年で3品目を栽培する三毛作までできるためでもありますが、冬場、積雪に悩まされる但馬地域の人々にとっては、うらやましい限りかと思います。また、雨が少なく、実際今夏もまだ夕立は一度もありません(これでまた夕方が暑い!)。そのため、かんがい用のため池数がきわめて多く、県内のため池数約3万8千カ所のうち、淡路では約2万3千カ所と6割を占めています。また、島内3市合わせた1km2あたりのため池密度は38カ所と、日本一となっています(2015:淡路県民局調べ)。水不足に悩んできた先人の苦労や、営農に対する熱心さがよく分かります。
今はちょうどタマネギを乾燥させる季節、他所にない風物詩といえば、なんといっても吊り小屋でのタマネギ乾燥風景でしょう。吊りながら乾燥させることによって、収穫直後に比べて全体的にピルビン酸含量は低下し辛味が薄れ、全糖含量、なかでもショ糖含量が高くなり甘みが増してきます。皮の色も赤みが増し、ほどよい色つやになってきます。
現在地元では、「淡路島のたまねぎ農業システム」を「世界において重要かつ伝統的な農林水産業を営む地域」として、世界・日本農業遺産の認定に向けて農水省に申請中で、その中には吊り小屋も含まれています。しかしながら、タマネギを手で束ねて吊る作業は、手間のかかる作業であり、いくら熱心な淡路地域の人々とはいえ、高齢化や担い手不足が顕著になってきた近年では、敬遠されがちです。淡路農技ではこうした現状に対応し、収穫から乾燥までの作業の省力化を進めるべく、タマネギの掘り取り後にピッカーで拾い上げたタマネギを500㎏大型コンテナに収納し、そのまま乾燥できるシステムを開発中です。
伝統を守りながら、省力化も進めなければならない。その兼ね合いについては、付加価値の付け方や地域の合意形成に議論を深めていく必要がありますが、これらの技術開発が、少しでも産地の維持発展につながればと、センター職員一同努力しています。