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センター雑感

当センターの各部署が順に担当して、季節の風景や出来事など様々な話題を紹介します。
今月は 森林林業技術センター 木材活用部 課長 永井 智が担当します。

研究機能が強化され、25年目を迎えた木材活用部

戦後の復旧造林や拡大造林の開始から半世紀以上が経過した現在、兵庫県では、スギ大径材の利用促進が喫緊の課題となってきています。そこで当センターでは、従来外国産材が9割以上のシェアを占めてきた横架材(梁・桁)へのスギ材の利用拡大を目指し、平成21年度から「県産スギ材を横架材に利用するための技術整備」に取り組んできました。そして、製材工場でのスギ材付加価値化技術である「心去り二丁取り平角材の生産技術」や「簡易木材強度測定システムWoodFFT」、プレカット工場や工務店でのスギ材利用技術である「たわみに対する信頼性を高めるスパン表ソフト 簡単部材算定」や「高強度梁仕口Tajima TAPOS」を開発してきました。

スギ横架材の高付加価値化・信頼性向上は、今後益々の大径材化が見込まれるスギ資源の利用を促し、山元に利益を還元するための重要な課題であると言えます。同時に、横架材について継続的・多角的な実証試験を進め、生産者・需用者に情報を発信することは、需給体制の強化、ひいては資源循環型林業の実現につながるものと考えられます。このような状況下、平成30年度、木材活用部では施設・設備の機能強化に取り組む機会に恵まれました。以下に、今回整備された主な施設・設備をご紹介します。

(1) 木材天然乾燥舎(写真1)

屋根部の軸組材料には、「WoodFFT」で強度を測定した「心去り二丁取り平角材」の仕口に「Tajima TAPOS」加工が施されて用いられるなど、当センターの開発技術がふんだんに活用されています(県産材100%)。クリープ試験室(写真1右の扉内、写真2)では、横架材に長期の曲げ荷重を加え、含水率・寸法・曲げたわみ量等の変動傾向を追跡します。

   
写真1 木材天然乾燥舎
写真2 クリープ試験室

(2) 木材人工乾燥舎(写真3)

柱・梁・桁は集成材、野地板は針葉樹構造用合板からなる県産材100%の建物(大屋根)です。人工乾燥設備では、平角材等について、割れや変色の発生を抑制した乾燥手法を検討し、スギ横架材の高付加価値化を図ることを目指しています。

写真3 木材人工乾燥舎(大屋根)と人工乾燥設備(右奥)

(3) 恒温恒湿室(写真4)

温度20℃、相対湿度65%に保たれた室内に100kN万能強度試験機を設置しており、試験体の調湿や「JIS Z2101木材の試験方法」に準拠した試験を行うことができます。

写真4 恒温恒湿室

(4) 自動送材車付帯鋸盤(写真5)

長さ6mまで、直径60cm程度までの丸太を製材することができます。平角材試験体の作製や、大径材の付加価値を高める製材木取り技術の研究等を行います。

写真5 自動送材車付帯鋸盤

(5) WoodFFT(写真6)

木材のたわみにくさ(ヤング係数)を非破壊かつ簡易に精度良く測定できる装置です。兵庫県林学職員が開発したPCソフトを基に当センターで実証試験を行い、「簡易木材強度計開発グループ」並びに「しそう材ブランド化推進グループ」によって改良が重ねられ、「(株)しそうの森の木」によって販売された商用1号機です。

写真6 WoodFFT

(6) 分析走査クライオ電子顕微鏡(写真7)

樹幹内における水分分布や元素分布を細胞レベルで観察することができる電子顕微鏡です。スギ大径材の利用促進を妨げる要因となっている高含水率心材や黒心材の形成機構の解明を目指しています。

写真7 分析走査クライオ電子顕微鏡

平成7年度に設置された当部(写真8)は、今年度、25年目を迎えました。成熟を続けるスギ等の県産木質資源の利用促進、並びに、県内木材産業の技術支援に向けて、今後も試験研究課題、依頼試験、受託研究等に取り組んでいきます。

写真8 木材活用部全景