水産技術センター資源部では、水産資源や漁場環境に関する調査・研究を行っています。
水産資源に関しては、水産生物の生態を解明したり、漁業活動の情報提供や漁況の予測、さらに、資源管理技術や漁場造成技術の開発を、また、漁場環境関係では、播磨灘、大阪湾および紀伊水道における水温、塩分、栄養塩濃度等の分布や、赤潮の発生状況等を調査しています。
これらの調査・研究には、調査船「新ひょうご」による海洋観測等が不可欠です。ここでは、調査船による調査で集積された水温データから、温暖化と水産業について紹介します。
1 調査船「新ひょうご」
「新ひょうご」は全長24.8m、総トン数48トン、最高速度30ノットを有する高性能調査船であり、省力化された設備や高速性能によって、効率的な調査が可能となっております。
ただし、平成16年までは1リットル当たり40円代であった燃料価格が、最近は75円程度まで高騰したため、集約的な運航を余儀なくされており、船員の負担が増大するとともに、赤潮発生時の緊急的出動への支障が心配されています。また、これから始まるノリ養殖では、ノリの色落ち被害の原因である珪藻プランクトンの発生を監視する業務への支障も心配されています。
2 播磨灘の水温上昇と水産への影響
調査船による漁場環境調査は、当センターが設立された大正13年から開始されており、貴重なデータが蓄積されています。観測地点が現在の形になった昭和48年から平成16年までの32年間の水温データを解析した結果、最近の水温が約1℃程度上昇していることがわかりました。
この水温上昇の影響と考えられる現象として、これまでに見られなかった新しい生物の出現や、水産生物の生活サイクルの変化が観察されています。
(1)シャットネラ アンティーカ
夏季の有毒プランクトンとして漁業被害を与えており、従来は7月下旬頃から赤潮を形成していましたが、近年は6月下旬頃から出現するようになりました。
(2)ユーカンピア ゾディアクス
冬季に大量に発生して、海水中の栄養塩である窒素や燐を吸収するため、養殖ノリが栄養不足となって色落ち被害を与えています。
(3)ミドリイガイ
日本ではムラサキイガイが見られましたが、近年、この種の棲息が拡大しており、養殖カキに付着して漁業被害を与えています。
(4)ナルトビエイ
播磨灘ではあまり見られませんでしたが、近年、夏季に多く見られるようになっています。アサリを餌としているため、近年のアサリ漁獲量の激減の原因の一つとして疑われています。