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センター雑感

当センターの各部署が順に担当して、季節の風景や出来事など様々な話題を紹介します。
今月は【畜産技術センター 家畜部】が担当します。

最近の食品偽装表示問題に思う

昨年は、全国各地で食品偽装表示問題が発生し、私ども食品に関わるものとして非常に神経をとがらせた一年でした。殊に、「比内地鶏」や本県特産の「但馬(たじま)牛(ぎゅう)」「三田(さんだ)牛(ぎゅう)」といった有名ブランドの名称を用いて騙りを働いた食品メーカーに、怒りというよりもなんとも表現の仕様のないやるせなさを感じました。これまで繰り返し同様の事件が惹起し、多くの国民が金、かね、カネの世界にうんざりしていた矢先のことで、非常に腹立たしい思いがします。もちろんお金には大きな魅力がありますが、もっと世の中に対して正直に立ち向い、正々堂々とお金儲けができないものでしょうかと、ついつい愚痴をいいたくなる今日この頃です。

かつて、国内のBSE発生を契機に、牛肉のトレーサビリティ・システムが確立されましたが、このシステムが動き出した途端、それまで流通していた多くの偽物の神戸ビーフが一瞬にして市場から姿を消しました。また、我が国ブロイラー産業発祥の地、但馬で、営々と築いてこられたある企業のブロイラーのブランド名を心無い人に無断で使用され、他産地の鶏肉と置きかえられて売られたという事件もありました。このような話は、何も畜産物だけではなく、米を始めとした多くの農産物でも数多く見られた現象です。

食品のみならず、世界的に有名なブランドのコピー商品が中国を中心に大量に生産されて世界中を横行しており、今やコピー商品が一大産業として成長してきた感があります。かつて我が日本も、現在の途上国と同じように、コピー商品を輸出して当時の先進国に多大な迷惑をかけていた時代があったのではないかというようなことが、幼い時の記憶にありますので、今の状況を一概に攻め続けるのもどうでしょうか。先人たちが苦労して作ったブランドを、たやすくコピーしてお金を儲けることには憤りを感じますが、それは貧しさ故にやむなくしてしまっていることなのではないでしょうか。経済大国といわれる我が国においてさえ、偽物が氾濫している状況ですので、先進国といわれる国々は、まず自国内でそのようなことがないよう法整備や取締り態勢を強固にし、次の手段として、コピー商品を作っている国にそうしないよう申し入れることは当然として、それらが密輸入されないよう徹底的に防御態勢を築くことも重要な課題です。先進国のみならず途上国も参加する国際的に通用する条約が締結され、世界が一丸となってコピー商品を追放しようという気構えが必要です。そのためには、まず貧しいといわれる人たちが経済的に豊かになり、次に精神的に豊かになる必要があります。そこに到達するには計り知れない努力と時間が掛かるかもしれませんが、豊かさを求めるなら、世界の人たちがその努力を惜しんではいけません。

ブランドとは、多くの人々が何年、何十年、あるいは百年を超える時の移りの中で、日々こつこつと築き上げてきた成果なのではないでしょうか。それをほんの一握りの心無い人たちが目先の利益追求だけに走って、大切なブランドを一瞬にしてなくしてしまいます。少なくとも本県ではそのようなことのないよう関係者が一致団結し、多くの本県産ブランドがいっそう名声を博するよう頑張る必要があります。

「但馬(たじま)牛(うし)」や「神戸ビーフ」はいうまでもありませんが、今年は、関係団体や行政機関が一体となって協力し、当センターで開発した特産鶏「ひょうご味どり」や「霜降り豚肉」がどんどん市場に出回り、「比内地鶏」のように偽物が出現するほどまでにブランド化したいと意気込んでいますので、読者の皆様のご理解とご協力をなにとぞよろしくお願い申し上げます。