「食の安全・安心の確保」に欠かせない技術開発
農産物の産地偽装、中国餃子の農薬混入、農産物の残留農薬等食の安全・安心を脅かす事件が発生し、大きな関心事になっています。平成12年に改正されたJAS法の生鮮食品品質表示基準に基づき、その原産地を記載することになっています。ところが、産地偽装を見抜く技術がないとこれを防ぐことはできません。そこで、これらの研究開発が緊急かつ重要なテーマとなっています。
兵庫県立農林水産技術総合センターでは、県特産のタマネギ、黒大豆の産地及び品種判別技術の開発に取り組んでいます。品種判別では、同じ品種が他の産地で栽培されていれば、その産地を区別することはできません。産地判別技術が必須です。
農産物の産地判別の基本は、作物中の元素は栽培されている土壌成分の影響を受けるので、作物中の元素を測定して、肥料成分等の不安定な元素を除いた元素についてその違いを見つけることにあります。
次の3つの判別方法を開発しました。
- 分析機器を利用して作物体の元素を分析し、得られた値を統計解析することにより判定する方法
- ストロンチウムの同位体比に着目し、年代の古い地層は重いストロンチウムの比率が高いことを利用した作物のストロンチウム同位体比により判定する方法
- ストロンチウムの含量の違いをSPring-8(大型放射光)により非破壊で瞬時に分析する方法
(1)と(2)はタマネギ、(3)は黒大豆の産地判別に使っています。これらの分析にはいずれも高度な分解処理技術と測定機器が必要です。現在は、もっと簡易に分析でき、しかも精度を高めようと研究を進めています。
タマネギの産地偽装についてもマスコミで取り上げられ騒ぎになりましたが、詳しい調査の結果、偽装はありませんでした。これは、産地判別技術の開発が新聞等で掲載され、関係者に周知されていたことが偽装発生の抑止力になった結果だと思われます。
総合センターでは、農作物の農薬残留対策、カドミウムの低減化の課題にも取り組んでおり、これらの技術開発が消費者、生産者の求める安全・安心な農産物生産に貢献しています。