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センター雑感

当センターの各部署が順に担当して、季節の風景や出来事など様々な話題を紹介します。
今月は【森林林業技術センター 資源部】が担当します。

日本人の寿命は年々伸びており、それとともに高齢になっても舞台ででんぐり返しを続けておられたMM子さんをはじめとして、還暦を過ぎても年を感じさせずに薄型テレビのCMに日々登場されるYS合さんなど、若さを保ち続けられている方たちが非常に増えています。

樹木の寿命は人間に比べて非常に長いものが多くあります。屋久杉などは1,000年を超えるといわれ、1,000年未満のものは小杉といわれているそうです。それでは、こういった樹木たちも若さを保ち続けているのでしょうか?

樹木には若い時と年をとってからとでは、葉の形が異なるものが多くみられます。有名なものでは、ヒイラギは若い時にはトゲをもち、年をとってからではトゲがとれて丸くなります。まるで、人間についていわれているのと同じですね。

スギについても同様で、若い時には針葉が長く、角度も開いています。年をとったスギの上の方に着いている針葉は短くなり、角度も狭くなります。したがって、さわると若い時の針葉の方が痛く感じられます。

スギが年をとると下の方の枝は枯れあがり、上の方にしか針葉は着いていないのですが、まれに幹の下の方から短い枝が発生することがあります。この枝の針葉は若いときの針葉と同じ形をしています。この枝の着いている部分の幹を内部に削っていきますと、幹の中心部分に到達します。実は、この木が若い時にできた組織につながっているわけです。

樹木の上の方の組織は年をとってからできたものですが、下の方には若い組織が残っているというわけです。

若い時の性質を維持しているのは下の方の枝だけではなくて、根もそうです。ケヤキの根を掘り出して切断し、発育処理をすると、幹から切り離された根の切り口から若い性質をもった枝を発生させることができました。

この若い性質をもつ枝は、さし木をすると根の発生も容易で、成長もよいことがわかりました。また、さし木だけでなく、接ぎ木についても同様で、若い性質の枝を接ぎ木した苗木の方が成長がよいことがわかりました。接ぎ木苗では、どちらも同じような根をもっている筈なのに不思議ですね。

この若さを保つにはさし木で育てた苗木を地上20cmくらいでカットし、それから発生する枝を利用することで、同じ遺伝子をもった若い苗木を半永久的につくることができます。

将来、兵庫県に適した無花粉スギを開発できた時、この方法を利用することにより、根の発生も容易で、成長も良い、タネから育てたのと同じ性質を持ちながら親と同じ遺伝子型をもつという、両者の良い面を兼ね備えた、さし木苗を生産することができます。

樹木は年をとらないと、その本当の性質がわからないものですが、年をとった良い木を増やすのに、こういった若さを保つ性質を利用することができます。