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センター雑感

当センターの各部署が順に担当して、季節の風景や出来事など様々な話題を紹介します。
今月は【森林林業技術センター 木材利用部】が担当します。

宍粟市にある森林林業技術センター木材利用部は、平成7年度に設置され、県産木材の利用推進をめざして、県産木材の強度、乾燥、加工、製品開発の研究、製品の性能評価などに取り組んでいます。

(森林・林業を取り巻く諸情勢の変化)

兵庫県内の人工林は成熟化が進んでおり、伐採可能な46年生以上のスギ・ヒノキの人工林が35%を占め、10年後には70%を占めることになります。

幸いにも、本県では、既に、低コスト搬出システムが民間の素材生産企業によって技術開発されており、これによって森林所有者に利益を還元することが可能になっています。原木価格の長期低迷により、これまで林業経営は採算に合わないと思い込んでいた森林所有者が、森林に目を向けるようになってきています。

(新たな県産木材流通システムの構築)

このような時代背景の変化により、今後、原木が大量に搬出されることが予想されるので、新たな県産木材の流通システムとして、原木の集積から加工、徹底した品質管理、販売まで行う県産木材供給センターを宍粟市一宮町に設置することになりました。

(県産木材利用の重要性)

県産木材の利用は、伐採・植栽・保育の林業生産サイクルを円滑に循環させるために大きな役割をもっています。

県産木材供給センターの本格稼働にむけて、その重要度が増しています。県では「ひょうごの木造・木質化作戦」として、
①公共施設等木造・木質化50%作戦 ②県産木造住宅10倍増作戦 ③暮らしの中に木材を取り入れる運動を展開し、県産木材の利用拡大を進めているところであります。

(木材の良さのPR)

森林林業技術センターでは、県産木材の利用拡大を図るために、木材加工業者、大工・工務店、建築士などを対象として木材利用技術研修会などを実施していますが、県民の方々にもっと「木材の良さ」を理解していただくことも重要であると考えています。

その中で、センターで行った研究成果の一例として「木材の調湿・断熱性の評価試験」を紹介します。

○試験方法

県産木材を含む木材十数種、および鋼材等を用いて、身近な環境(温湿度)条件下において4項目の試験を設定、実施しました。

◎試験結果

(試験1:木材のある、なしによる調湿効果の違い、写真1)

温度を大きく変動(5~35℃、春夏秋冬を想定)させた場合、デシケータ内に木材を設置しなかった場合は、湿度が大きく変動したのに対し、木材を設置した場合は60~70%程度の湿度が維持されました。

→ 部屋に木材を置くだけでも湿度は適度に保たれる

(試験2:木材の吸湿効果)

温度を一定(20℃)にし、湿度を上昇(65→92%)させたところ、木材は、湿度を上昇させた直後から、重量はすみやかに増加する傾向にありました。たとえば、6帖一間の周囲に高さ1mの腰壁を設置した場合、厚み1cmで約3.0~5.4kg、厚み2cmで4.7~10.5kgの水分が吸着可能と試算されました。

→ 木材をたくさん露出させておくほど水分を吸着・放出してくれる。

(試験3:木材の熱伝導率)

木材の熱伝導率を測定したところ、約90~160(×10-3・W/mK)の範囲にありました。コンクリート(1,000)、鉄(83,500)やアルミニウム(236,000)より1~4桁も熱伝導率が小さく、たとえば人が触れた際、急激な熱移動が起こりにくいことが証明されました。

→木材は、触感を快適に保つための環境づくりにも有効である。

(試験4:木製容器の調湿効果、写真2)

ボックス(デシケータ、スギ2体、発泡ポリスチレン)を設置し、室内の温湿度を変動(5~35℃、45~85%)させたところ、ボックス内の湿度は、スギだけがわずかな挙動範囲(約60~70%)にあり、きわめて高い調湿機能を発揮していることが確認されました。

→木材に囲まれた部屋の湿度はかなり快適である。

これからも、木材利用方法の研究とあわせて、木材の良さを県民の方々に広くPRし、木材利用を推進していきたいと考えています。

   
左:写真1 デシケータでの調湿試験、右:写真2 木製容器の調湿効果試験
図1 デシケータ内の温湿度変動(上:温度、下:湿度)