トップページへ

センター雑感

当センターの各部署が順に担当して、季節の風景や出来事など様々な話題を紹介します。
今月は【内水面漁業センター】が担当します。

寒くなり、日本酒の美味しい季節になりました。当センターは、昨年3月の各部門の紹介に記載したとおり朝来市の山間部に位置していますので、この時期は平地よりかなり寒くて、足下から忍び寄る寒さはまさに底冷えという言葉がぴったりな土地柄です。

しかし、高温少雨が続いた昨夏は、いかに冷涼な土地柄といえども河川水量の減少と水温の上昇が避けられず、展示用等に飼育している冷水性のアマゴやヤマメにとっては灼熱地獄だったと思います。実際、養殖業者さんは水の確保に苦労し、出荷直前の魚を全滅させた事例も出てしまいました。

現在、これらの魚は2~3℃の水温の中で水槽内を元気に泳いでいますが、その姿を見るとセーターやジャンパーを着込んで震えている自分が情けなくなります。

   
左:アマゴ 体表に朱点があり、まさに渓流の女王、右:ヤマメ 朱点がないので、若干地味です

センターでは、魚病の研究等を主な業務としていますが、10月半ばからはこれらの魚の人工授精やふ化した仔魚の飼育も手がけており、12月下旬からは量産技術開発中のコレゴヌスという北欧等を原産地とする魚の人工授精に取り組んでいます。3月には元気な仔魚がふ化してくれるのではないかと期待しているところですが、この魚は他のサケ科の魚と比べると卵が小さくてふ化率が低い上に、仔魚も餌を満足に食べられないほど大人しすぎる(はっきり言うと鈍くさい)ので、7~8㎝の大きさになるまでは本当に手間が掛かり、現在のところ量産にはほど遠い状況です。

しかし、コレゴヌスは雪のような白身で食味が良く、新しい冷水性養殖魚種として養殖業者さんの期待を集めていますので、何とか量産技術を確立しようと努力しているところです。将来、「たじま雪ます」という名前で地域の特産として育ち、経営環境が厳しい養殖業者さんに少しでも役に立ってくれればと考えています。

   
左:銀白色のコレゴヌス、右:コレゴヌスの調理例

読者の皆さんの中には、生臭いというイメージをもたれて川魚を苦手にしておられる方もおいでではないでしょうか。アマゴやヤマメは全くそのようなことがありませんし、そのまま塩焼きにして食べられるので非常に調理が簡単な魚です。特に、炭火の遠火で1時間半から2時間程度かけて焼くと旨味が増すとともに、骨が柔らかくなるので頭から丸ごと食べることが出来ます。課外授業でやって来る魚嫌いの小学生も思わず頬張ってしまう美味しさです。炭火の調理は家庭ではちょっと無理ですが、キャンプなどで一度塩焼きに挑戦してみてください。