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センター雑感

当センターの各部署が順に担当して、季節の風景や出来事など様々な話題を紹介します。
今月は【 総務部 】が担当します。

“食の安全・安心”を支え“兵庫県のブランド”を守る試験研究

近年、産地偽装やブランド偽装、消費期限の改ざん(書換え)など、最も大切な“食の安全・安心”を脅かし、消費者を欺く事件が多発しています。

そこで、当センターが取り組んでいる様々な試験研究の中から“食の安全・安心”を支え“兵庫県のブランド”を守る試験研究の一端を紹介します。

【タマネギの産地偽装防止技術】

“淡路産タマネギ”は、とても甘くておいしいという評判で高い値がつく“兵庫県のブランド”です。このため、悪徳業者が他産地の安いタマネギを“淡路産”と偽って販売するということがあるかも知れません。

そこで、当センター生物工学部では、バイオテクノロジーを駆使して、DNAを分析し、DNAのパターンの違いによる品種判別技術を開発しました。この技術により本県で栽培されている品種(気候や土壌の違いで産地により様々な品種が栽培)かどうかを確認することができます。

また、環境部は、農作物に含まれる残留農薬の分析など、0.01PPMレベルの非常に精密な元素分析がお得意ですので、タマネギに含まれるストロンチウム(放射線を出す同位体ではありません。普通に土壌に含まれ農作物に吸収されます。)などの元素を分析し、数種の元素の量のパターンの違いによる産地判別技術を開発しました。産地の土壌が違えばタマネギが吸収する元素の量が違うという点に目を付けた技術です。

この2つの技術を使えば、非常に高い確率で産地偽装を見破ることができます。産地偽装の抑止には非常に大きな効果があると思います。

   

《研究成果紹介ファイル:PDF》

【世界に誇る神戸ビーフの素牛“但馬牛”】

今年の干支(えと)は丑(うし)ですが、昨年は、高級料亭「船場吉兆」の事件から“但馬牛”が一段と有名になりました。“但馬牛”は、牛肉の最高級品である“神戸牛(神戸ビーフ)”をはじめ、松阪牛や近江牛の素牛となる黒毛和種という和牛で、昔から兵庫県内のみで交配され純血(他都道府県の牛の血が混ざっていない)が守られている“兵庫県のブランド”です。

この兵庫県内の血統がしっかりした父母から生まれる“但馬牛”ですが、その中でも兵庫県内の生産者に育てられ、一定の規格をクリアした最高級品だけが“神戸ビーフ”を名乗ることができます。また、県内には、“三田ビーフ”“篠山ビーフ”“黒田庄ビーフ”“淡路ビーフ”など、数多くの“但馬牛”のブランドがあります。

ところで、兵庫県で生まれる但馬牛のお父さん(“種雄牛”といいます。)は、全員[全牛?]当センターに居ることをご存じでしょうか。当センターの畜産技術センター家畜部や北部農業技術センター畜産部では、県下の優秀な雄牛を候補牛に選定し、体格や容姿などの基準に加え、後代検定(本人[本牛?]の肉を検定するわけにはいかないので、その子牛の肉を検定)を行っています。そして、その中の成績優秀な12頭がエリートとして当センターの牛舎で飼われ、“種雄牛”として精液採取されています。この12頭より更に優秀な雄牛が出現すれば成績の低いものから引退させられるという過酷な競争の世界です。

採取した精液を顕微鏡で検査し、パスすればストロー状の容器に入れ、液体窒素で凍結保存し、県内の但馬牛を生産する畜産農家に農協等を通じて配布しています。そして、そこで獣医さんらにより人工授精され“但馬牛”の子牛が生まれます。こうして純血を守り、改良しながら優秀な牛を常に選抜し“兵庫のブランド”を守っているのです。

   

《研究成果紹介ファイル:PDF》

【世界初!光による作物の病害防除】

当センター農業技術センター病害虫防除部では、イチゴのうどんこ病を特定の波長の紫外線で防除する技術をパナソニック電工株式会社と共同で開発しました。光による作物の病害防除技術としては世界で初めての快挙です。特定の波長の紫外線がイチゴの抵抗力を増強することにより、うどんこ病にかかりにくくなります。

光により害虫を防除する方法は、既に開発されています。ナシの果実を吸って傷物にするヤガ(夜蛾)類の防除に始まって、今や花や野菜に広がっている黄色蛍光灯や高圧ナトリウム灯を使って害虫を防除する技術で、淡路農業技術センター農業部が取り組んでいます。黄色い光が夜行性のヤガ類を昼間だと錯覚させ活動を鈍らせることにより被害を防ぎます。淡路島のカーネーションやレタスなどの産地では、その時期に夜に車で通ると壮観な眺めです。

また、黄色い光では、花が咲かなかったり、咲くのが遅くなるなどの障害がキクには現れますが、当センターの研究員はここであきらめず、違った色(波長)の光を試験研究し、緑色蛍光灯によりキクの害虫オオタバコガを防除する技術を開発しました。そこで満足することなく前進するのが当センターのモットーです。

光による病害虫の防除は、“安全・安心”な農産物を生産する技術の1つですが、これ以外にも様々な方法を駆使して“食の安全・安心”の技術の開発に鋭意取り組んでいます。

《研究成果紹介ファイル:PDF》

   
光によるイチゴうどんこ病の防除

緑色蛍光灯によるキクの夜行性害虫防除技術

高圧ナトリウム灯利用によるレタスのヤガ類の防除

農薬散布だけに頼らない病害虫防除の推進