現地試験で学んだ「レタスのマルチ栽培」について
淡路島南部では、温暖な気象条件を生かして古くから三毛作が営まれてきた。昭和50年代は、水稲-ハクサイ-タマネギという作付けが主流であったが、近年は、消費の変化からハクサイに代わってレタスの作付けが増えている。レタスは、定植してから2~3か月で収穫が可能で、これも栽培面積が増加している一因である。特に、専業農家では、レタスを年間に2~3回作付けする体系が多くなっている。しかし、連作による土壌病害の発生が多くなり、その影響を受けた厳寒期穫り栽培での大玉生産が課題であった。
そこで、地元のJAや普及センターと試験研究機関が一体となってその対策を立てるため、発生地での現地試験を行うことになった。まず、太陽熱を利用した土壌消毒を行った。しかし、露地栽培で圃場全面にビニールを張る作業を夏場に行うことは重労働だということで不評に終わった。次に、マルチャーを利用して雑草の発芽を抑え熱線を透過する紫色のフィルムを張り、そのままの状態で作付け前にマルチに穴をあけてレタスを植え付ける省力的な方法に改良した。しかし、これもフィルムの色が周囲から目立つという理由で受け入れられなかった。
そこで、黒ポリフィルムで試験を行った。すると、これまでの慣行の露地栽培に比べて、黒ポリフィルムを早くから張ることで多少は発病しても、レタスの大玉生産が出来ることがわかった。(後でわかったことだが、黒マルチを張ることでは、媒介糸状菌を完全に殺菌することは出来なくても、病原ウイルスが不活化するため。)
今度は、さすがに圃場を貸して頂いた農家やその周囲で様子を見守っていた人達も「これならイイ」と納得し、早速マルチャーを購入された。最初に、マルチ栽培の試験をする時は、マルチャーが無く試験場からトラックに乗せて運んで行き、さながらマルチ張りの講習会のようであった。今では、マルチ栽培の面積は、機械導入等への支援もあり冬期栽培の80%まで普及している。
現地では、このマルチ栽培を基本として、耐病性品種の利用や排水改善などの対策も組み合わせて、レタスの土壌病害を上手くかわしながら栽培面積は今も増加している。
淡路農業技術センターでは、その後もこのマルチャーを用いた 薬剤(カーバム剤)の同時散布機の開発による省力防除技術や、施肥機を搭載したマルチ内表層施肥法による減肥・省力化技術の開発など、更なる技術開発を続けている。