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センター雑感

当センターの各部署が順に担当して、季節の風景や出来事など様々な話題を紹介します。
今月は水産技術センター 増殖部が担当します。

養殖ノリ新品種の開発

今漁期のノリ養殖は、いよいよ終盤を迎えております。これまでの生産状況は、12~1月にかけて寒波の影響で刈り取り作業ができなかったことや、その後、大阪湾、播磨灘ともにスケレトネマなどの小型珪藻の増加により海水中の栄養塩が漸減し、ノリの色落ち被害が広がったことにより、3月中旬時点では、生産枚数、生産金額とも昨年漁期を下回っています。3月下旬現在では、一部海域でノリ生産を終了している漁場もありますが、この漁場以外では、降雨により海況も回復して生産も増加中であり、最後の追い込みに期待したいところです。

さて、今回は、水産技術センターが兵庫県漁業協同組合連合会と共同で開発した養殖ノリ新品種「ひょうごはりま薫黒(くんこく)」について紹介します。

兵庫県は全国でも有数のノリの産地で、ノリ養殖は、本県瀬戸内海側の漁業生産金額の約4割を占める基幹漁業となっています。しかし、1995年頃以後は、毎年のようにノリの色落ちが発生し、年によってはノリ生産に大きな影響を与えています。このため、ノリ生産者からは、漁場環境の改善とともに、養殖ノリの安定生産のためには、優良品種の開発が強く要望されてきました。

そこで、水産技術センターでは、兵庫県漁業協同組合連合会と共同して養殖ノリ優良品種の開発を進めており、平成21年度には新品種「ひょうごはりま薫黒」として品種登録出願を行いました。

今回、開発した新品種は明石市二見地区で、これまで養殖されていたノリから選抜、育成した品種であり、一般的な品種に比べて、

  1. 生長が速い:多収性の傾向を示している
  2. 成熟が遅い:養殖する期間が長くなる
  3. 濃い色調を示している:色の黒い乾海苔が生産できる
  4. 葉体が厚い:本県の主力製品(兵庫県産の用途は業務用[外食用]が主力:1.スーパーの巻き寿司 2.コンビニのお弁当、おにぎり 3.回転すしなど)に適している。

― などの特徴があります。

近年、海水中の栄養塩の低下に伴うノリの色落ち現象により、乾海苔の品質低下や生産量の減少が頻発する状況の中で、本品種「ひょうごはりま薫黒」は、県産ノリの用途として主力である“色のある業務用乾海苔”の安定生産に寄与することが期待されます。

   
ノリ漁場で養殖された「ひょうごはりま薫黒」