トップページへ

センター雑感

当センターの各部署が順に担当して、季節の風景や出来事など様々な話題を紹介します。
今月は農業技術センター 農産園芸部 研究主幹(野菜担当) 秋山 隆が担当します。

私の所属する農業技術センター農産園芸部では、薬草栽培の試験研究も行っています。

兵庫県で“薬草”の研究と言うと意外な印象をもたれます。もっとも当技術センターで研究が始まったのは昭和60年4月に薬草試験地が設置されてからですので、今年で25年とそれほど古い歴史ではありません。その発端は、丹波市山南町(当時、氷上郡山南町)から薬草研究への強い要望があり、薬草試験地がその地に設置されたことがきっかけです。

薬草試験地のある山南町和田地区が、兵庫県では最大の生産地であることはあまり知られていないようですが、江戸時代には既にオウレンが栽培された記録が残っています。その後、明治にはサフラン、昭和にはセネガが導入されて農家の大きな所得源となっており、全国的にも有名だったとのことです。

全国的にみても薬草に関する試験研究を行っている農業関係の研究機関は少ないようです。兵庫県では、現在、主に薬草の栽培法の改善や見本展示を行っています。設立当時は薬草の生態的調査や地域適応性、連作障害の解明、省力化や安定生産技術の開発などにも取り組んでいました。

   
左:薬草試験地の前景、右:トウキの収穫作業(薬草試験地にて)

今まで研究されてきた品目は、オウレンにはじまり、ミシマサイコ、シロナンテン、セネガと続き、その時代のニーズにあわせて変遷しています。現在は、トウキの栽培法について研究を行っています。薬草を専門とする研究員はいませんが、野菜と果樹担当の職員が各1名携わっています。昨今の健康ブームと相まって「医食同源」という言葉がよく使われるようになりました。これは日頃から栄養的にバランスのとれた食事を心掛け、おいしい食事をとることによって病気の予防や治療を行おうとする考え方です。この考え方からすると野菜や果樹の研究者が薬草を担当することは、分野こそ違いますがその延長上に薬草があり、理にかなったことであると思っています。

薬草の大半は、中国からの輸入に頼っています。その状況はこれからも大きく変化することはないと思いますが、昨今の農薬残留問題や地産地消の考え方が浸透し、国内産さらに兵庫県産の薬草が見直され、漢方薬や入浴剤などに多く使われるようになることを願っています。