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センター雑感

当センターの各部署が順に担当して、季節の風景や出来事など様々な話題を紹介します。
今月は森林林業技術センター 木材利用部 主任研究員 石坂 知行が担当します。

太陽熱を利用したログハウス型木材乾燥装置の試作

兵庫県では戦後に植林されたスギ,ヒノキの資源が成熟しつつあり,利用可能な46年生以上の人工林面積が平成26年には1,490 k㎡,県土面積の約18%に達します。健全な森林を維持し,炭素のストックを確保するためにはこれらの木材を有効に利用することで資源の循環利用を図る必要があり,丸太供給の倍増が計画されています。

木材は含水率によって性質,特に寸法が変化するため,大気中の水分と平衡状態にしてから加工する必要があり,「乾燥」の工程が不可欠です。木材乾燥は灯油や重油を大量に消費し,コストと環境負荷を要する工程です(図1,2)。また,従来の乾燥機は1機あたり1000万円以上とたいへん高額であり,小規模な工場では導入,維持が困難な場合が多いのが現状です。

森林林業技術センターでは,企業,大学との産学官連携事業で,太陽熱を利用した,低コストで環境負荷の小さな木材乾燥装置を試作しました。兵庫県では年平均10~14MJ/㎡程度の日射量があり,これを利用することで化石燃料を用いない木材乾燥を目指しています。また,従来の乾燥機はステンレス製の炉体が一般的ですが,ステンレスは高価である上に,製造時の環境負荷が大きいため(図3),炉体を木製とすることでコストと環境負荷を縮減すると同時に県産木材の有効な利用を図りました。

試作機は1坪の小型装置で,パネルで加温した不凍液をポンプで木製の炉体に送り込んで加温します(図4-6)。内部には表面積が大きな銅製のチューブが配管してあり,太陽熱で加温された不凍液が流れることで放熱されて暖まります(図7)。平成23年1月より試運転を開始しましたが,厳冬期においても,無加温の対照区と比べて温度が高く,湿度が低い状態が得られることが確認されました(図8,9)。今後は更に効率的に集熱して加温するとともに蓄熱材等を配置して夜間の温度低下が緩和されるように改良し,実大材の乾燥が可能な大きさにスケールアップする予定です。

   
図 1,2 積み上げ方式によって算出した製材品の製造エネルギーと炭素放出量
ウッドマイルズ研究会2008「建設時における木造住宅の二酸化炭素排出量」より抜粋,作図
   
図 3 炭素放出量
   
左:図 4 装置全景、右:図 5 装置側面
左図 6 装置平面図、右:図 7 炉体内部:
   
図 8 温度の推移(2011.2.4~6)
図 9 湿度の推移(2011.2.4~6)