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センター雑感

当センターの各部署が順に担当して、季節の風景や出来事など様々な話題を紹介します。
今月は農業技術センター 農産園芸部 主任研究員兼研究主幹 松本 功(作物経営機械部門)が担当します。

水稲の生産コスト、作業安全について

1.水稲の生産コスト

兵庫県では、お米を全国トップクラスの低いコストで生産することを検討しています。現在、農家戸別補償制度により、水稲作に一定金額の政府補助金が支払われています。一方で、政府はTPPに参加表明をし、農産物においても貿易の自由化交渉が始まろうとしています。

平成6年頃から米価の下落傾向は続いていますが、さらに生産費を下げておかないと、たちまちに輸入米に凌駕される事態が予想されます。兵庫県の水稲生産費は、佐賀県と比較して、農機具、労働費、肥料費が割高です(表1)。

   

①コスト(経費)を下げるためには、直播栽培、疎植栽培導入による省力化、資材費、労働費の削減が必要です。また、農業機械の大型化・面積規模拡大、汎用利用(麦・大豆作と兼用利用)で農機具費低減を図ることができます。

②収入アップがベースになりますから、収量・品質の確保、向上がさらに必要です。

③規模拡大に際し農地集積を図ることで、機械や物資の運搬時間の増加をできるだけ抑えます。

2.各種の直播栽培導入によるコスト下げ

直播方法の技術指標を整理しました(表2)。

   

①湛水直播では、育苗関連のコスト・時間の低減とともに軽労化が図れます。カルパー直播方式は栽培体系が確立され、適期・適作業によれば、収量性は移植とほぼ同等で、多目的田植機に装着できる播種機の導入がすすんでいます。鉄粉コーティング直播方式は、苗立ちや除草対策に課題がありましたが、専用播種機では8~10粒の点播(株播き)をすることで、苗立ち不良や倒伏の不安定要素は無くなりました。

②乾田直播では、湛水直播のメリットに加え、播種機等の汎用利用となるので、機械費用の低減が図れます。また収量性は、湛水後のほ場の水もちが重要です。不耕起乾田直播方式では、耕耘作業の省略が大きなメリットとなります。

3.技術センター等における取り組み

苗立ちや雑草防除に対する直播栽培の様々な課題解決にこれまで取り組んできています。

播種深度を制御する機能の開発支援、直播用除草剤の適用性試験・登録拡大、播種同時処理できる除草剤・散布装置開発、鉄粉コーティング湛水直播の苗立ち特性、カルパーや鉄粉のコーティング技術、不耕起乾田直播機の播種条件・雑草防除・施肥体系確立などです。

湛水直播の面積は、普及センター・農業技術センターの指導により、拡大しています(図1)。

県では、水稲の低コスト生産を目指して、技術確立実証ほを各地で今後展開することとしています。

   

4.作業安全について

県内の平成21年の農作業死亡事故は20件となり、増加しています。死亡事故につながる重大事故の比率や、高齢者の比率は年々高まる傾向にあります。なかでもトラクタの転落や転倒による死亡事故が増えています。安全フレームやキャビンが装備された機種にしたり、安全意識を高めるため毎年3月に開催する農作業安全講習の受講をお奨めします。機械事故を減らすため、普段の仕業点検も重要です。

「コスト低下も、まず作業安全から!」