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センター雑感

当センターの各部署が順に担当して、季節の風景や出来事など様々な話題を紹介します。
今月は北部農業技術センター 農業・加工流通部 部長 永井 耕介が担当します。

ネギの不思議

暖かい「お味噌汁」や「うどん」とくれば「きざみネギ」が付きものです。また、鍋物には白ネギが美味しさを引き立てます。鍋物でも「ヤク味」として「きざみネギ」が重宝がられています。なぜ「ヤク味」と言われるのでしょうか。食べ過ぎによる腹痛を防ぐ「薬」の効果(薬味)があるからとする説と料理の味の引き立て「役」、料理にとても「役」立つ味(役味)からきているとする説があります。

古来、日本では西日本が青ネギで、東日本は白ネギと食べる部分が異なっていました。最近では関西でも白ネギを食べる人は増えてきましたが、やはりネギの主流は青ネギです。ネギはビタミンCやカルシウム、鉄などのミネラルが豊富に含まれていてもちろん栄養価に富んでいます。と言ってもネギの特徴は独特のにおい(香り)です。そのにおいの正体は「アリシン」(含硫化合物)という物質です。この物質は元来ネギには含まれていないものなのです。包丁などで細胞が傷つけられ細胞が壊されると酵素が活性化し、「においの素」の成分「アリイン」が揮発性の強いにおいの成分である「アリシン」に変身するのです。それで、細かくきざめばきざむほど、においは強くなります。切るまではネギの中に「におい成分」が存在しないなんて、不思議だと思いませんか。においの素の成分(アリイン)の量は白ネギには青ネギのおよそ2倍量が含まれています。

ネギのにおい成分には身体を温める効果があります。ネギのにおい成分が交感神経を刺激し、副腎髄質ホルモン、アドレナリンの分泌を促進し、その結果、体温が上昇するのです。寒くて風邪を引きそうな時はネギを食べて身体を温めてください。

但馬地方には「美味」で有名な「岩津ネギ」があります。岩津ネギは青葉の部分から白根まで大変柔らかく、すべて余すところ無く食せる全国的にも珍しいネギです。特に冬の冷え込みが厳しくなると甘さと軟らかさが増し一層美味しくなります。「においの素」の成分の「アリイン」は加熱すると甘味成分となり、まろやかな甘味を引き立てます。また、肉厚の青葉には卵白のような半透明でねっとりとした物質が豊富に含まれています。これは糖とタンパク質からなる粘性物質です。この粘性物質があるからこそ、対凍性が高まり、氷点下の寒さでも凍らないのです。しかも、この物質は美味しさをも増し加えてくれるのです。年明けの1,2月は岩津ネギが最も美味しい季節です。是非ご賞味ください。