堆肥と肥料の60年間にわたる長期連用試験
9月上旬、今年も水稲「ヒノヒカリ」が様々な草姿あるいは生育の違いを見せながら穂ぞろい期を迎えています。まだ、穂先が顔を見せていない田んぼもあります。
農業技術センター(加西市)には、1951(昭和26)年から、60年間同じ管理で、堆肥と肥料を施用しながら、「水稲+麦」の二毛作を継続している試験田があります。肥培管理の由来がはっきりしている長期連用試験です。長い年月の中で担当者も変わってゆきますが、多くの協力者に助けてもらいながら関係者一同が、毎年、新しい気持ちで手塩にかけて管理しています。
植物が生育するために必要な3つの主要な栄養を三要素と言います。窒素、リン酸そしてカリです。この連用試験では、三要素の欠如が作物の生育や収量に及ぼす影響を調査しています。三要素、無カリ、無リン酸、無窒素、無肥料の5ほ場に、稲わら堆肥施用の有無を組み合わせて、合計10ほ場を設置しています。60年前には同じ土壌で生育をしていた水稲や麦は、今ではまったく異なる生育を示します。もちろん土壌も大きく変化しています。この生育差は、「土づくり」や施肥の大切さを強く示唆するものです。
60年にもわたる「水稲+麦」の二毛作体系の長期連用試験は、他に例を見ません。このような連用試験から、土壌の変化と生産力の関係を明らかにするための基礎的なデータが得られます。
技術が日新月歩で進歩している現代でも「農」の基本はやはり「土づくり」です。「土づくり」の成果は短期間ではわかりにくいこともあり、「土づくり」にかける手間と努力がコストに見合うかどうかが大きな課題です。また近年、温暖化の影響で土壌中の有機物の消耗が進行することが推察され、地力の低下が心配されます。堆肥等有機物を施用する意義がますます大きくなります。
長期連用試験の値打ちは、リアルタイムで作物の生育を観察できることです。水稲や小麦のリン酸欠亡症状、カリ欠乏症状をほ場で観察できるのは、世界広しといえどもここ加西の農業技術センターだけです。一度当センターへお来しいただき、水稲や小麦の生育状況をを見ていただきたいと思います。