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センター雑感

当センターの各部署が順に担当して、季節の風景や出来事など様々な話題を紹介します。
今月は畜産技術センター 家畜部 研究主幹 設楽 修が担当します。

今年の暑熱対策

「今年の夏も暑かった。」ここ数年、毎年の感想です。家畜部では、但馬牛の種雄牛、繁殖雌牛、肉用牛のほか種豚、肥育豚や種鶏、肉用鶏を飼育しています。どの家畜も夏の暑さには弱く、昼間はじっとして、飼料を食べなくなってしまいます。そこで、夏場は畜舎に日覆いをかけて直射日光を遮ったり、送風機で家畜に風を送って体温を下げたり、細かい霧を発生させて、気化熱により気温を下げるなどの暑熱対策を行っています。

   

しかし今年は「関西、節電の夏」の大号令のもと更なる暑熱対策を行い、送風機の電気代節約に努めました。今年行った対策が、「畜舎の屋根への石灰散布」です。水で溶いた白色のドロマイト石灰を動力噴霧器で屋根に吹きつけ、太陽光を反射させて屋根の温度上昇を抑えようというものです。散布は7月下旬に行い、暑さの中での高所作業でしたが、職員一丸となってがんばり、無事故で作業を終了しました。

   

石灰の効果は散布直後から感じられ、家畜の管理者は畜舎内を吹く風が涼しくなったと言っていました。晴天の8月20日午後2時にスレート葺き牛舎の屋根裏表面温度をサーモグラフィーで測定したところ、石灰散布箇所の表面温度は32℃、散布しない箇所の温度は53℃と、屋根裏の表面温度が21℃も下がり、石灰が太陽熱の吸収を大きく妨げていることが確認できました。牛舎内の温度を外気温よりも低くするためには冷房装置の設置が必要となり、現実的には難しいことですが、焼けた屋根裏から牛の皮膚に直接届く輻射熱を、石灰散布により少なくできたことで、今年の夏は家畜たちも少しは過ごしやすかったのではないでしょうか。管理者も送風機の運転開始時間を遅らせるなどの節電を図ることができ、今回の石灰散布は暑熱対策と節電への効果が大きかったと考えています。